力ずくでドア開けてみよ春の暮 春暮れて何食わぬ顔で猫を追ふ 校舎裏の藪の暗がり春の果て 春暮るる松陰神社の手水鉢 春薄暮肝硬変なら余命無し 青不動どこか不機嫌春の果て 晩春の襖の奥のがらんどう ユニットバスの天蓋春に果ては無し 浅草通りは空箱だらけ春の果て 顔の泥は拭いても取れず春の果て デスマスクはたぶん少年春惜しむ
摘草に行くと危うき人ばかり 摘草やあの世の母とこの世の母 草摘むは老いたるゆえかうすれけり 愛犬のロープの長きに草を摘む 草摘むを平成の世の証しとす 新装開店横目でにらみ草を摘む 摘草や防空識別圏の下 マドンナも老いには勝てず草刈女 千草摘み四百万年人の世は 摘草をいとわぬ少年我れもまた 関羽千里を駆ける摘草はまだこれから 摘草の会とは俳句の会のこと 草摘んでをり未生の空の下