私が大学入学のために上京したのは1970年代前半のことである。大学入学というのは表向きのことで、本当の目的は1960年代末の学生運動の帰趨を身をもって確かめるためであった。予想通り、学園紛争はすべて消滅しており、わずかに遅れて来た世代の手による退行的な運動が燻っているのみであった。それでも就職運動直前の3学年までは授業にはほとんど出ず、自治会室や部室のある学生会館に屯して、現在の自分達は何処にいるのか、この先どうなるのかと不安に震えながらも、同じ不安を抱えた仲間たちと片寄せ合っていた。・・こう書いてしまうとそれなりの充足感もまだあり得たかのように見えるかもしれない。実際は、すべてがあまりにも不確かで何をやっても、何を言ってもただひたすらに空疎であった。4学年になっても就職活動を忌避し、通学自体することがなくなっていた。以後、昼夜が逆転し、夜な夜な古本屋→ジャズ喫茶通いが続いた。世間では、先行して美味しい果実を摘み取ってしまった70年安保(全共闘)世代の村上龍や村上春樹、高橋三千綱などの晴れやかで完結した物語群の眩しさから目を背け、ユーミンらのニュー・ミュージックの華やかさにもなじめず、すべてが中途半端な精神状態で宙を仰ぐしかなかった。そんな中でも、次々と新たな世代が現れて来た。彼らの中には、先行していた我々の確信の無さを批判しながらも、自分たちの新たな指針を自ら打ち出すことも出来なかった。彼らは、私たちの《シラケ》をやむなく共有し、さらに深めてゆく他なかったのだろう。第2次【シラケ世代】の誕生である。もう大学から完全に足が遠のいていた1970代の後半に、渋谷駅の通路であるものを目撃した。アニメ映画【宇宙戦艦ヤマト】の支援グループのアンケート机であった。そこに座っていた若者は20歳前後、高校生か大学に入ったばかりくらいだろうか、その当時、このアニメ映画が若者の間で静かだが熱気の籠もったブームが巻き起こっていた。私より大学でいえば一回りを少しオーバーした世代である。70年代後半とは、もう70年安保の残り火は完全に消滅し、【無気力】【無関心】【無責任】の三無主義がはびこっていた。・・・《続く》
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