美空ひばり忌剣禅一如の寺にゐる 林檎忌の林檎この街のどこか うれし楽し大好き美空ひばりの忌 美空ひばり忌の岬ぐるりと巡りけり ひばり忌のどこか小さくどこか淡し 林檎忌の愛すべきものりんごのへた コールタール乾かぬままにひばりの忌 寅さんのマドンナ列伝ひばりの忌 でいごの花標本にしてひばりの忌 平成とは平和が成るときひばりの忌 竜の落し子のやうな人だったひばりの忌 美空ひばり忌の半旗は何本上がったか
雨も風も陽も何も無く夏至となる その病棟はせをで溢れ夏つづく 夏深く夜遊び癖はもう治らず 夏至の日やたった一行の告訴状 夏終る何かいいことないか子猫ちゃん イケメンゴリラシャバーユ夏至の中心に(名古屋東山動物園) 腰痛の直中にあり夏至の果て 川柳を褒めては夏至の月を見る 断食も離婚も出来ず夏至を待つ 離婚後の巨大な自由夏至の夜は 戦後七十年のオッペケペー節夏なかば ほろびゆく俳句と夏至のウクレレと
「華氏451度」という映画樺美智子の忌(6月15日) 樺忌の誰もが飲んで歌い消ゆ 人類家畜牧場が目前樺の忌 無帽の人ばかりの公園樺の忌 湯川さんも後藤さんも知っていた樺の忌 誰か拳を振り上げてみよ安保の日 夢なら夢でかまわずことしも安保デー どの戦争怒っているのか安保デー 死に切れず化石となりぬ安保デー インターナショナルって何だっけ青嵐
生きて虜囚の辱めを受けず青あらし 鈴木しづ子の句の無重力青あらし ニュートラルな生老病死青嵐 ローカル路線バスの太川陽介青嵐 弓の反り緑布に収め青嵐 ふるさとの連衆といふ俳誌青嵐 杉崎美香どこにもおらず青嵐 被災地の生活不活発病青嵐 オカリナの空オカリナの海青嵐 シルバーカートに時折座り青嵐 大観音を亡母と定め青嵐 下関の四国艦隊青嵐 カミュの死は予測不可能青嵐 ヤタ烏の問いの激しさ風青む
父となること無き父や終戦日 父の日やパッパラパーと過ごしけり 父の日や父の命日もっと先 父の日や軍人恩給の明細書 父の日の子の赤ら顔父譲り 父の日や母より先に逝きし青 父の日の父の不在はもう動かず 父の日や「番場の忠太郎」名調子 父の日や戦後も飯合手放さず 父の日や毒ガス製造の過去問はず 父の日や授業参観の赤ら顔 父の日やこれでお終いもう会えない