まほろば俳句日記

毎日見たこと聞いたこと感じたことを俳句にします。JーPOP論にチャレンジ。その他評論・エッセー、学習ノート。競馬も。

【俳句の此岸】芭蕉・ヘーゲル・・エグザイルなるものの所在/結社の大型新人(2)

2017-01-24 09:15:02 | エッセー・評論
ヘーゲルの苦笑を背に初詣   中山宏史(所属結社誌新人賞・77歳)

前記事に掲げた【時雨忌やどうやら俺はエグザイル】はかなりの傑作ではなかろうか。主宰は稀に見る大型新人と掲揚した。その主宰とは戦後俳句の生き証人(筆者が命名)である。エグザイルとはあのエグザイルであるだけでなく、その出所のエグザイル(故郷喪失者)の意味を兼ね備えている。
・・氏は言う。「エグザイルとは故国を喪失し放浪する者のこと(中略)元々エグザイルは二〇世紀終盤にブレイクした米国の思想家サイドが捨てた故国を捨て切れず、米国に組せずパレスチナの民に寄り添う言論を展開します。(中略)私はエグザイルな気分の中にサイードの苦痛と芭蕉の再び帰らぬ非日常への出立の想念がゆらめいています」(中岡昌太「各賞管見ー詩的構築への風景ー」)
ヘーゲルの苦笑そして《エグザイル》なる存在の苦渋、この二つに中山氏の出発点と到達点が見え隠れする。まずこれらの縮めることは不可能と思われる間隙に何があるのかを探ってみたい。・・・《続く》

【俳句の此岸】どうやら俺はエグザイル/結社の大型新人(1)

2017-01-23 14:57:51 | エッセー・評論
時雨忌やどうやら俺はエグザイル   中山宏史
この唐突な言い回しを目にして、今風の若者の作かと思ってしまった。何しろかの《エグザイル》を一句に詠み込んでしまうのだから半端ではない。「どうやら俺はエグザイル」と遠回しに言ってのけるのも相当のしたたかさと言わざるを得ない。おまけに、出だしは何と【時雨忌】である。この作者はすぐ後で結社新人賞を取ってしまうのもうなずける。まさに大型新人の登場であろう。ところで、この作者は何歳なのだろう?この結社に20~30歳代はおろか、40歳代ですらいなかったはずだ。昨年の結社大会に出てみて驚いた。彼は何と何と77歳で主宰ともわずか1歳違いなのだという。・・・《続く》

新宿の闇/新雑句雑感(160)~プロローグ5の終わり

2017-01-22 07:09:01 | 新雑句雑感
大寒の空缶蹴飛ばすことをせり  大寒の闇とは新宿の闇のこと  激流のピタリと止まる大寒日  大寒のボトルシップを破砕せよ  大寒の横丁にある死者の塔  新宿は滅ばず大寒の虚空となる  大寒の父の墓標の遠ざかる  大寒の猫の水飲む振りをせり  大寒の夏井いつきは虚妄なり  大寒や今上陛下あと二年  大寒や東京五輪中止とも  大寒の母の死顔を探りをり 

永遠の嘘/新雑句雑感(159)~プロローグ5の終わり

2017-01-21 06:15:25 | 新雑句雑感
大寒や永遠の嘘をついてくれ(つま恋2006) 大寒や新宿の夢醒めやらず  大寒のシャッターチャンス無尽蔵  大寒の夢夢無人駅の亡母  大寒や氷海創刊同人です(所属誌の同人会長) 大寒のゴジラヘッドの破砕音(新宿歌舞伎町) 大寒の老いたる者の深夜便(NHK ラジオ) 故郷出て大寒の空炎上す  無言劇大寒の街死屍累々  大寒やコレステロール下げませう  大寒の飛ぶ人またも落下せり  大寒の奥多摩山系青つのる    

新宿へ/新雑句雑感(158)~プロローグ5の終わり

2017-01-20 07:23:48 | 新雑句雑感
新宿へ大寒の犬縮こまる  大寒の最高気温0とあり  大寒の夫の死因伏せしまま  大寒や「僕は泣いちっち」振り絞る(守屋浩の1960年代のヒット曲) 大寒の鳶が輪を描く夢違え  大寒や死に至る病俳句にも  大寒のワンコインランチ泥カレー  原罪にあらず大寒の空の青  歌舞くとは大寒の灯に他ならず  大寒やボタンの一つ失せしまま  大寒や人工の滝に掌を合はす  大寒の街のどこかにエグザイル(故郷喪失者) 大寒の行商の母岩のやう