御殿場線というやつは一時間に二本しか電車がない。
乗り過ごしたら大変だ。
小学三年生の末っ子の大冒険。
一人で電車に乗って、御殿駅で降りたらバアバが待っている手筈。
松田駅の改札でいってらっしゃいと送り出そうとすると、駅員さんが、
危ないので、ホームまで一緒にいってあげてください!
と、真剣に言う。
駅員さんの迫力に押されて、先行く末っ子を追うようにホームに出たら、びっくり。
電車が2両くらいしかないらしく、
ホームのはるか先に電車が止まっている。その距離目測50メートル!
駅員さんが危ないので、と言うのは、慌てた子どもがホームから転落するやもしれないくらい遠くに電車が、と、言うことか。
もう出発のベルがなっている。
は、走れない…と弱気になると、
50メートル先にたどり着いた末っ子がこちらに大きく手を降って、
じゃあね!
と、言った。
人にまぎれて見えなくなった。無事に電車に乗れたらしい。
ふと、三番目の子が一歳半のとき、朝保育園で私に、バイバイ、と言った姿を思い出した。
通い出して何日も、朝私と別れられなくて泣いていたのに、
ある日突然、バイバイ、と言ってクルリと背を向けて行ってしまった。
末っ子のときも同じ事が起こって、
いつまでも見送って動けなかったのは私のほうだ。
あなた、いつまでもいられても困るでしょ
と、人には言われるが、
やっぱり、今日も、
ああ、いっちゃった
って思ってしまったホロリ秋風。