日本で一番有名な近代建築と言えば国会議事堂、ひと目見るだけでほとんどの人が分かります。全面石張りの外壁は重厚、堅牢そのもの、ピラミッド状の塔屋などはどこか霊廟を思わせます。ひと目で議事堂と分かる独特のデザインはある意味秀逸と言えるのかもしれませんが、近代建築の魅力に欠けるのは否めません。
現在の議事堂のデザインが決まるまでには、かなりの紆余曲折があったようです。当初設計は大蔵省の妻木頼黄とほぼ決まっていました。ところが東京駅や日銀を設計した辰野金吾から横やりが入り、コンペ(公開の設計競技)開催ということで話しは落ち着きました。ところがこのコンペは、審査委員長の辰野が選んだ応募案に自らが手を加え最終案にするというとんでもないお手盛りコンペ。最終的に辰野は当選案を見ることなく死去、妻木も亡くなったためコンペの当選案(無名の新人)に大蔵省の技師が大幅に手をくわえ現在の議事堂のデザインが決定しました。
建築は一人の建築家の自己表現(スタイル)というものがあって初めて作品となります。近代建築ファンとしては、日本建築界の巨匠である辰野や妻木が手がけた議事堂も見てみたかったと今更ながら思ってしまいます。
■建設資材は鉄骨、石材、木材に至るまですべて純国産、全国から名工が集められ工事に当たりました
■列柱を前面に配したエントランス
■最上部はドームではなくピラミッドの様な塔がのります
■国会議事堂/千代田区永田町1-7-1
竣工:昭和11年(1936)
設計:大蔵省臨時議院建築局
施工:直営
構造:SRC造3階
撮影:2017/08/11