かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

旧亀山製絲室山工場(三重県四日市市)

2013-08-05 | 三重の近代建築

諏訪公園をあとにして、近鉄四日市駅から内部線で西日野方面に向かい、四郷地区にある近代建築を訪ねます。途中日永駅から八王子線に分岐、次の駅が終点西日野駅です。近鉄八王子線は、大正元年に三重軌道が日永駅~八王子村駅を開業、路線名の由来となっているのですが、現在西日野から先の区間は廃止されているため、四郷地区までは西へ1km程の歩きとなります。四日市駅からのバス路線もあるのですが、今回は全国でも珍しい線路幅の狭い軽便鉄道に乗りたかったので、鉄道を利用しました。小さな可愛い車両がのんびり走る姿は、いかにもローカル線らしく、なかなか良いものです。

天白川沿いを西へしばらく歩くと、道路の北側に長い塀で囲まれた旧亀山製絲室山工場が見えてきます。この工場は明治36年土地の素封家伊藤小左衛門が創設したもので、広大な敷地に33棟の工場が並んでいました。その後昭和16年に亀山製絲が購入、しかし時代とともに製糸産業も衰退し、平成7年に操業停止、平成11年にほとんどの工場が解体され、現在は南側の道路に面した洋風建築の繰糸工場や土蔵など5棟を残すのみになっています。

現在取り壊しをまぬがれている繰糸工場は、東西70mにわたる長大な擬洋風の木造工場建築で、白く塗られた下見板の外壁が明治期の工場らしい佇まいを感じさせます。平屋建てですが、外観は下に胴蛇腹の付いた高窓のため、2階建てのように見えます。この高窓と越屋根側面の窓の開閉で、採光と湿度を微妙に調整し、工場内の作業環境を一定に保ちました。

現在の繰糸工場の荒れ具合を見ると、今まで残っていることが奇跡的と言える状態です。ここまで来たらぜひ残してもらいたいのですが、建物の修復保存には莫大な費用が必要です。持ち主の企業がだめなら四日市市で何とかして欲しいところですが、当然ながらどこの自治体でもそんな余裕は全くありません。建物を取り巻く状況は大変厳しいのですが、この地域の近代化に貢献した貴重な産業遺産として、未来に伝えられことを願ってやみません。


◆旧亀山製絲室山工場/三重県四日市市室山町574
 竣工:明治36年(1903) 
 構造:木造平屋建
 撮影:2013/05/04 


■道路に沿って北側には塀がめぐる



■工場中央にある豪華な造りの玄関は、東宮殿下(大正天皇)視察の折に増築された





■軒まわりの繰形付きもち送りが美しい造形を見せる



■工場西端の増築部分は、大正天皇の御座所として設けられた



■北側より工場を望む~老朽化により屋根がうねっている





■5千坪の広大な敷地の南端に一棟だけ残る繰糸工場



■前回訪問時撮影(2006/11/03)




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2 Comments

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Unknown (ぞうまさ)
2013-08-05 22:01:39
日曜日、内部・八王子線乗車と駅探訪で西日野にも行きました。近くにこういうものがあるとは…

次の機会には是非立ち寄りたいと思います。
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ぞうまささん (shortwood )
2013-08-06 08:38:55
いつもありがとうございます。

室山工場の近くには資料館になっている旧四郷役場もあります。
こちらも良い雰囲気の洋館で、一見の価値ありですよ。
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