四日市港から市の中心部近鉄四日市駅方面へ戻り、駅のすぐ東側にある諏訪公園に向かいました。諏訪公園は明治39年(1906)開園の歴史のある公園で、噴水のある広場の北側に、茶色のスクラッチタイルに覆われたちょっと洒落た建物が建っています。
この建物は御大典記念行事として、昭和4年(1929)市立図書館として建設されたもので、当時四日市銀行頭取、伊勢電気鉄道社長などを務めていた実業家熊澤一衛により、図書二千冊とともに寄贈されました。とても昭和4年築とは思えないモダンな建築で、竣工当時は、1階に事務室、閲覧室、書庫、談話室が、2階に講堂、貴賓室がおかれていました。
建物正面の玄関上部には、中央に開いた本、両脇に餅をつくウサギをデザインした白い装飾パネルが設置されています。本に記された2588(皇紀)は、この建物が昭和天皇即位式を記念して建てられたことを、ウサギは寄贈者をあらわすものと言われています。
現在国の登録有形文化財に指定された建物は、すわ公園交流館として再活用されるという近代建築としては幸せな余生を送っており、多くの地域の住民に利用されています。
■建物正面南側
■玄関脇には登録有形文化財のプレートが設置されています
■皇紀2588は昭和天皇の即位式(昭和3年)、三つの星は天皇の象徴でしょうか
■ウサギの装飾は、「月台」という雅号を持ち歌を好んだ寄贈者の熊澤をあらわしていると言われています
■建物北側~出入り口があるのは2階ですが、小山が建物に接しているため平屋建てに見えます
■建物東側
■公園南側より、すわ交流会館を望む
◆すわ公園交流館(旧四日市市立図書館)/三重県四日市市諏訪栄町22-15(諏訪公園内)
竣工:昭和4年(1929)
設計:清水組名古屋支店
施工:清水組名古屋支店
構造:鉄筋コンクリート造2階建
撮影:2013/05/04
※国指定登録有形文化財