40数年ぶりに蔵王山を歩いて来た。古い写真が残っているが、自分でどこをどう歩いたか記憶がない。そこでもう一度歩いておこうというのが動機だった。
出かけたのは6月22日で、この日は関東や北陸が梅雨入りしたものの、東北は晴れていて絶好の登山日和となった。
初めに蔵王山について簡単におさらいしておこう。蔵王山(蔵王連峰)は東北地方の中央部を南北に連ねる奥羽山脈の中にあり、深田久弥氏が選んだ日本百名山の一つである。主峰の熊野岳は標高1841mの活火山だが、山容はなだらかで威厳は感じられない(写真上)。むしろエメラルドグリーンの水をたたえた火山湖の御釜が、蔵王連峰のシンボルとなっている。40数年前に御釜の脇を歩いた写真が残っている。しかし今は危険なため立入りできないようだ。
一方蔵王山自体へのアクセスは容易だ。宮城・山形の両県をまたぐ県道12号(蔵王エコーライン)と有料道路の蔵王ハイラインを使えば、標高1720mにあるレストハウスまで車で行くことができる。レストハウスから刈田岳(標高1758m)は目と鼻の先だ。刈田岳から熊野岳へは緩やかな登山道を1時間ほど歩けばよい。恐らく日本百名山の中で、もっとも登りやすい山の一つではなかろうか。
今回は蔵王エコーラインの刈田峠(標高1598m)駐車場から歩き出した。登りは早朝で運転開始前の登山リフトに沿って歩き、下山はほぼ平行して敷かれている登山道を歩いた。
本記事ではshuの花日記らしく、見かけた花を中心に記事をまとめてみた。
1.刈田峠駐車場で観た花(標高1590m付近)
名前が分からないキク科の植物。花径が4~5cmの大型の花をつけていた。蔵王エコーライン沿道にたくさん観られた。
ハクサンチドリ(白山千鳥、Dactylorhiza aristata、ラン科ハクサンチドリ属の多年草)。駐車場付近にたくさん観られた。
ノビネチドリ(延根千鳥、Neolindleya camtschatica、ラン科ノビネチドリ属の多年草)。ハクサンチドリに比べて数は少なかった。
アブラナ科の植物だが、名前が分からなかった。(山歩きさんからヤマガラシを示唆いただきました。)
ナナカマド(七竈、Sorbus commixta、バラ科の落葉小高木または高木)。
2.刈田峠駐車場~刈田岳で観た花(標高1600~1700m)
ツマトリソウ(褄取草、Trientalis europaea 、サクラソウ科ツマトリソウ属の多年草)。
マイヅルソウ(舞鶴草、Maianthemum dilatatum、キジカクシ科スズラン亜科マイヅルソウ属の多年草)。
ミヤマオダマキ(深山苧環、Aquilegia flabellata var. pumila、キンポウゲ科オダマキ属の多年草)。
ハクサンチドリ(白山千鳥、Dactylorhiza aristata、ラン科ハクサンチドリ属の多年草)。
ウラジロヨウラク(裏白瓔珞、Rhododendron multiflorum、ツツジ科ツツジ属の落葉低木)。
タニウツギ(谷空木、Weigela hortensis、スイカズラ科タニウツギ属の落葉低木)。
ナナカマド(七竈、Sorbus commixta、バラ科の落葉小高木または高木)。
イワカガミ(岩鏡、Schizocodon soldanelloides、イワウメ科イワカガミ属の常緑の多年草)。
(左)刈田岳から御釜と熊野岳を眺める。(右)刈田岳山頂付近で観た鳥。
3.馬の背~熊野岳周辺で観た花
マルバシモツケ(丸葉下野、Spiraea betulifolia、バラ科シモツケ属の落葉低木)。
ウラジロヨウラク(裏白瓔珞、Rhododendron multiflorum、ツツジ科ツツジ属の落葉低木)。
イワオトギリ(岩弟切、Hypericum kamtschaticum var. hondoense、オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草)。
オノエラン(尾上蘭、Galearis fauriei 、ラン科カモメラン属の多年草)。
イワカガミ(岩鏡、Schizocodon soldanelloides、イワウメ科イワカガミ属の常緑の多年草)。
アオノツガザクラ(青の栂桜、Phyllodoce aleutica、ツツジ科ツガザクラ属の常緑小低木)。
ミネズオウ(峰蘇芳、、ツツジ科ミネズオウ属の常緑小低木)。
コマクサ(駒草、Dicentra peregrina、ケシ科ケマンソウ亜科コマクサ属の多年草)。
ロバの耳コースの熊野岳避難小屋から馬の背にかけて、多く観られた。
(左)幅広い馬の背。(右)熊野岳山頂。
4.蔵王エコーライン沿線(標高1000~1500m)で観た花
タニウツギ(谷空木、Weigela hortensis、スイカズラ科タニウツギ属の落葉低木)。
アズマギク(東菊、Erigeron thunbergii 、キク科ムカシヨモギ属の多年草)。
本州の中部以北の山地の草原に分布する。茎の高さは20〜30cm程度で、群生する。花期は4〜6月。
オニアザミ(鬼薊、Cirsium borealinipponense、キク科アザミ属の多年草)。
北陸から東北にかけての日本海側の山地の草原に見られる。茎の高さは1m程であり、葉は深く裂け、縁にあるとげは鋭い。花期は6-9月で、下向きに数個の花をつける。花(頭状花序)は筒状花のみで構成されており、花の色は紫色である。
ハナニガナ(花苦菜、Ixeris dentata var. albiflora f. amplifolia、キク科ニガナ属の多年草)。ニガナの品種。
日本全国に分布する。茎の高さは40~70cmほどになり、茎葉は茎を抱く。茎の上部で枝分かれし、多数の頭花をつける。花期は5〜7月。
サルナシ(猿梨、Actinidia arguta、マタタビ科マタタビ属のつる性落葉樹)かもしれない。
サルナシは日本では北海道、本州、四国、九州に分布するが、北海道や東北地方に多い。
撮影:2024/06/22
私は蔵王温泉から入山して熊野岳までは歩いたことがありますが、その先刈田岳方面は未知の世界ですので興味津々拝見しました。
私にとって馴染み深いお花をたくさん見せて頂きました。
その中で黄色いアブラナ科ですが、ヤマガラシしか思いつきません。また、テガタチドリの葉、唇弁をみますとノビネチドリのように思われますがいかがでしょうか。
アズマギクはミヤマアズマギクかと思いましたが、この機会にと調べたら蔵王山には分布していないと分かりました。
刈田岳から南、屏風岳、不忘山方面には足を延ばされませんでしたか。そちらの花畑も観たいものだと思っています。
昨日の深夜に書き始めて、急いで仕上げたものの、心配していたとおり間違いがありました。
テガタチドリと書いたものは、仰るとおりノビネチドリで間違いないと思います。
アブラナ科の花は似たものがよくあるので分かりませんでした。
山で観られるものとしては、ヤマガラシがやはり第一の候補ですね。
教えていただき、ありがとうございました。
今回は歩いた距離が6.8km、累積標高差が326mで、普段の半分以下でした。時間は3時間ほどでした。
天気も良かったので勿体ないことをしたと思います。
良かったのは前日にかみのやま温泉の下大湯公衆浴場に行けたのと、下山後に遠刈田温泉の神の湯に行けたことです。
秋にでももう一度歩いてみたいと思います。
その時はもう少し距離を歩きたいですね。
ハクサンチドリは尾瀬でひとつだけ見ました。
樹氷をご覧になるため山形蔵王に行かれたのですね。
地蔵岳までロープウエイが来ているので、アクセスがいいです。
私もロープウエイを使い、樹氷の間をスキーで巡るツアーに参加したことがあります。
どこをどう滑った(歩いた)か覚えていませんが、けっこう長い距離を歩いた記憶があります。
ハクサンチドリですが、蔵王では駐車場の周囲にたくさん咲いていました。
まるでうちの近所でタンポポを見かけるほどたくさん咲いていて、驚きました。
モンスターのような樹氷を冬になるとテレビで見ます。
雪の無い時期は、また違う自然を見せてくれていますね。
ハクサンチドリ、ミヤマオダマキ、イワカガミ、コマクサ、
中々見られない、高山らしいたくさんの花々を
今回も、楽しませていたきました。
ありがとうございます^^
梅雨に入りましたが、いきなり暑くて大変ですね。
今回は梅雨入りが間近の蔵王を歩いて来ました。
思いの外、観られた高山植物の種類が多くて、嬉しかったです。
ハクサンチドリ、ノビネチドリ、オノエラン、コマクサなどは今年の初見でした。
梅雨の間は山に行く機会が減るかもしれませんが、できるだけ機会を見つけて出かけたいと思います。
今日は関東の方はとても暑かったようですね。
京都も蒸し暑かったですが、30℃止まりだったのでまだマシだったのかもです。
そんな中、蔵王は涼しそうでいいですね!
私も今から25年くらい前に一度だけ旅行で行ったことがあります。
あまり覚えていないのですが、御釜の色がとても美しかったことだけ記憶に残っています。
これだけのザ・高山植物がみられるのであれば、今行ったら狂喜乱舞ですね(笑)
ご紹介いただきありがとうございました!
>涼しそう!... への返信
コメントありがとうございます。
私も「返信する」をクリックしてみました。コメント欄の上に2行が印刷されるようです。
さて、今日は暑かったです。日陰でも32℃を越えていました。
内陸の方ではもっと暑かったようです。山から戻って急に暑くなったので、ダブルパンチみたいです。
お花の方は思いの外たくさん観られてラッキーでした。
花の写真を中心に200枚あまり撮りました。別の道を歩くと湿原の植物も観られたようです。
次に行くとしたら、違った道を歩いてみたいと思います。
車でほぼ山頂まで行けるので、年取ってからでも行けます。
個人的には山の中に自動車道路を通すのはいかがなものかと思いますが、花好きのお年寄りには恩恵ですね。
東北では八幡平も同様です。