幸福のドロップ

理想の世界というのは、みんなが幸福で、便利で、欲望を満たされた世界なのだろうか？
もし、自動車事故をなくすなら、全ての自動車をコンピュータで管理し、自動化しなければいけないだろう。
もし、犯罪をなくそうとするなら、全ての人を一人の人間（もしくは神様？）の管理において、行動を取り決めるしかないだろう。
未来を想像して、不満を取り除くために効率よい世界を思い描くと、徹底的な管理社会となってしまう。
満たされない、だからそれが欲望となり、それを求めて行動し、達成されることが幸福なのだろう。
しかし、それは己の意志でなくては、幸福とは言えない。
満たされないからこそ、そこに注がれる一滴一滴を幸せに感じて生きていられるのかもしれない。
甘いドロップもあれば、辛いドロップもある。でも、そうやって積み重なることで欲望の器が満たされていく。果たして、器が満たされたとき、私たちは幸福になれるのか？
もし、器があふれたとき、何が起こるのか。きっとまた、新たな器が必要になるのだ。
おそらく、幸福というのは器が満たされることではない。器に注がれる一滴のドロップそのものではないだろうか。

無駄とも言える時間があるからこそ、このような思索が可能なのだ。
便利になり、時間を短縮させることだけでは、理想の世界を作り上げることはできない。しかし、理想を胸に器を満たすことこそ、生きる意義であるかもしれない。
常に矛盾があるからこそ、人は考え、人として生きているということだろう。