患者さんのお世話をさせていただいていると、私たち自身が無力感を感じることがよくあります。
なにせ、何かの薬剤を使用したからといって、私たちが寄り添ったからといって、患者さんの病気自体がよくなることはないのですから…。
ああ。
難しいな…。
そう感じる患者さんのそばにいると、連日の勤務の疲労が重なり、「疲れるぅ~~」と感じるときもしばしば。
お部屋に行きたくないな…。
そんな風に感じるときもあります。
それでも、そばにいさせていただいている、その患者さんの生きる姿にじかに触れさせていただくことが、どれだけ自分にとっての人間力(勝手に作った言葉です)につながるか…。
そんなこんなで、やっぱり、患者さんのもとに行こうという気持ちがにょきにょきっと湧いてきます。
死に様は生き様。
生き様は死に様。
終末期の患者さんに寄り添っているとそう感じることが多いものです。
「難しい患者さん」とは、たぶん、病態のこと以上に、その方の性格、考え方、これまでの生きてきた歴史や家族関係にあるのではないかと思われます。
医療者として、自分は真剣に患者さんやご家族とおつきあいをしていく所存でありますが…。
これが。
いつも真剣そのもの、直球勝負では精根尽き果ててしまうことがあります。
最近、スタッフと一緒にケアをしていて思うことがあります。
その、「精根尽き果てそうな」状態にある自分が、「難しい患者さん」に寄り添うときに、その状態をどう、捉えるのかということで。
それは、そんな状況にあっても、「くすっと笑える」場面を見つけること、です。
そのためには、一緒にくすっと笑ってもらえるスタッフがいることが大前提です。
具体的にいうと、「おもろいなー」ってことや「かわいいとこ、あるやん」というところを見つけることです。
思わず、目を細めちゃうような場面ってことでね…。
どんな状況でも、探せば、状況に慣れてくると、必ずあるものです。
ま、そのためには、患者さんをよしよししてあげたくなるような愛情を持っていることも大前提です。
最近、とっても「難しいな」と思える患者さんがいてはりまして。
それでも、その方の反応や言葉を発するタイミングをみていると、面白いなーと思えるところがあるんですね。
つまり、その方が面白くしてくれているというわけではなく、どんな状況にあっても、人間の面白味というものがあるのではないかと…、勝手に考えています。
患者さんの部屋からナースステーションに帰ってきて、「あはは」と笑っていることもよくあります。
これは、決して、患者さんの尊厳を傷つけるような内容ではありません。
あははと笑っているかと思えば、ナースコールが鳴って部屋に行き、その患者さんに寄り添いながら、鼻水を垂らして息を切らし、涙でぼろんちょになりながら患者さんのそばにいさせていただいている自分がいます。
いつも直球勝負ではなく、うまく状況をやり過ごす術を持っておくことは大切ですなぁ。
以前に、うちの主任に、その「難しい患者さん」に対するミッションを出しました。
「主任。●●さんの鼻毛が気になる。今日、切ろうと思ったけど、私はできんかった。様子を見て、切っておくように!せっかくのハンサムな顔が台無しやっ。」と。
(髭をそるにもタイミングがいるくらい、とってもしんどさが強い患者さんでね…)
主任も「そうやねーん、気になってんねーん」とげらげら笑いながら、ミッションを快諾してくれ、先日、ミッションは終了しました。
ちなみに一緒に笑っていたうちの主任も、その患者さんのそばで、汗を垂らし、鼻水垂らして涙を流して、その患者さんに寄り添っている人であります。
