![](http://img.bk1.jp/bibimg/0230/02301099.jpg)
宮西達也の絵本は、ウルトラマンやウルトラセブンのシリーズ?で知っていたが、
このシリーズの方が絵本としての完成度は高いと思う。
ウルトラシリーズは絵本の形態をとったファンブック、同人誌という印象がぬぐえず、
ウルトラマンやセブンを知っているから面白い、と思えるのだが、図書館で借りはしても買う気にはなれず。
ティラノサウルスの他のシリーズも見てみたが、この本が最も気に入った。
中生代を舞台にした、大型肉食恐竜と幼い草食恐竜が登場する、和製ファンタジー。
(以下、あらすじについて書いています、未読の方はご注意を。)
「おまえ、うまそうだな」と取って食おうとする大型肉食恐竜に、
生まれたばかりの草食恐竜が「おとうさん!」とすがりつくなんてあり得ない。
で、肉食恐竜が、唐突に示されたその愛情や信頼に応えようとするなんて・・・
もちろん、こんなこと絶対、あり得ない。
あり得ない状況…なのだが。
不器用に描かれた恐竜たちの心に、読む者の心は、みるみる共鳴していく。
大人も、子供も。
生まれたばかりで一人ぼっちで寂しくて泣く、アンキロサウルスの孤独。
それを食べようとして抱きつかれたティラノサウルスの困惑と、変化していく心境。
無心に信頼を寄せる、小さなアンキロサウルスに対して
ティラノサウルスは理想的な強者、父、として接して行くことになる。
自分が食べようとしてたアンキロサウルスが、他の恐竜に食べられそうになると守ったり。
「おとうさんのようになりたい」というアンキロサウルスを、教え導いたり。
ティラノサウルスを心から尊敬し、憧憬するアンキロサウルス。
ティラノサウルスは、その憧憬を利用し、別れの場面を演出する。
本当の父母(?)に引き合わせるために。
無言の別れは、アンキロサウルスにとっては新たな出会い。
誕生したばかりの草食恐竜が孤独に泣く場面で始まったこの絵本。
ラストは、孤独な大型肉食恐竜の、哀愁漂うシーンで終わる。
大型肉食恐竜は、泣きはしないのだけれど。