先日コメント欄で、ご愛犬のカイカイトラブルにオメガ3・6・9のブレンドオイルを与えていたけれど
皮膚やコートが油っぽくなってしまったという経験を書いてくださった方がいらっしゃいました。
製品の成分を見ると「なるほど、多分こうだな」という理由が推測できたのですが
他の皆さんにも共有したいと思い、記事にしました。
製品はK9ナチュラルが出している犬用サプリメントのブランドPROVIDAの「スキン&コート」です。
「ニコ、オイル好きだよ〜」
このブレンドオイルには、アマニ油、ルリジサ種油、ブラッククミン種油の3種のオイルが含まれています。
これらのオイルをブレンドすることで脂肪酸のオメガ3、オメガ6、オメガ9がバランス良く配合されます(されるはず)。
オメガ3とオメガ6は体内で作り出すことができないので、食物から摂る必要のある必須脂肪酸です。
オメガ9脂肪酸は他の食材から体内で合成することができる脂肪酸です。
原材料の3種のオイル、それぞれを簡単に解説していきますね。
・ アマニ油
フラックスシードオイルとも呼ばれますね。植物性のオメガ3脂肪酸の摂取源の代表です。
オメガ3脂肪酸にはいくつか種類があり、アマニに含まれるのは「アルファリノレン酸」です。
アルファリノレン酸は体内で別の種類のオメガ3脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)へと変換されます。
その後さらにまた別のオメガ3脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されます。
EPAもDHAも魚の油に含まれることでよく知られていますね。
アマニ油に含まれる成分が体内で活用されるためにはEPAやDHAに変換される必要があるのですが
犬はこの変換するための酵素が少なく変換能力が高くありません。(ちなみに猫は全く変換できません。)
ですから、犬はアマニ油を摂ってもオメガ3脂肪酸の摂取はほぼできないのです。
ちなみに人間でも、アルファリノレン酸からEPAやDHAに変換される率は8〜15%と言われています。
犬の場合はもっと低い割合です。
フィッシュオイルやクリルオイル(オキアミのオイル)に含まれるオメガ3脂肪酸はEPAやDHAなので、変換の必要がなく効率よく摂取して体内で活用されます。
EPAやDHAには体内で起こっている炎症を抑える作用があります。
皮膚炎や関節炎も炎症の一つですから、これらの症状にフィッシュオイルのサプリメントを処方する獣医さんも多いわけです。
・ルリジサ種油
聞きなれない名前ですよね?ボラージオイルとかボリジオイルという名の方が知られているかもしれません。
このオイルに含まれる主な脂肪酸はオメガ6脂肪酸の代表であるリノール酸とガンマリノレン酸、そしてオメガ9のオレイン酸です。
リノール酸はコーン油、大豆油、ヒマワリ油など、サラダ油と呼ばれる植物油に多く含まれます。
悪玉コレステロールを低下させる働きが良く知られていますが、リノール酸は体内でガンマリノレン酸に変換されます。
リノール酸には体内の炎症反応を促進するという働きがあります。
「なんでそんな厄介な性質が?」と思ってしまいますが、炎症反応を起こすことで体内に入った細菌などを退治するという役目があります。
つまり適正な量のリノール酸は免疫機構が正常に働くために必要なものです。
上で書いたようにリノール酸が体内でガンマリノレン酸に変換されると、今度は反対に炎症を抑える働きに変わります。
ボラージオイルには最初からガンマリノレン酸が含まれていますから、抗炎症という面で効率が良いのですね。
リノール酸をガンマリノレン酸に変換する能力は年齢とともに落ちていくと言われていますので、
そういう面でも最初からガンマリノレン酸が含まれる油は頼もしい存在です。
ガンマリノレン酸が含まれている植物は月見草、ブラックカラントがありますが、このルリジサ(ボラージ)が最も豊富です。
オレイン酸(オメガ9脂肪酸)は悪玉コレステロールを低下させる働きがよく知られています。
オリーブ油、キャノーラ油、アボカド、鶏肉などに多く含まれています。
・ブラッククミン種油
これも聞きなれない名前ですね。ブラッククミンはキンポウゲ科の植物です。
あの独特の香りのあるスパイスのクミンとは違う植物です。紛らわしいですね😅
脂肪酸はオメガ6のリノール酸が半分以上を占めます。そして次に来るのがオメガ9のオレイン酸。
その他、ビタミンやミネラル類を大変豊富に含む栄養豊富なオイルです。
それぞれのオイルに含まれる脂肪酸について書きましたが、簡単に整理しますと
- このブレンドオイルに含まれているオメガ3脂肪酸は犬の体内ではほとんど活用できない
- 3種のオイル全てにリノール酸が多く含まれている
- オメガ3・6・9が配合されたブレンドオイルとは言え、実質のメインはオメガ6
このブレンドオイル自体はとても良いものだと思うんですよ。
圧搾方法もコールドプレスという、摩擦熱が起きにくく酸化や栄養の損失の少ない方法ですし
3種のオイル全て、栄養豊富な食材です。
ただ、どちらかと言うと手作りごはんの素材として向いているオイルで、フードのトッピング向けではないと思います。
手作りごはんの場合、オメガ6脂肪酸が不足しがちですからこのような上質のオイルで補給することは大きな意味があります。
(ただし、その場合も食材に魚を使う又はフィッシュオイルをプラスするなどオメガ3は別に補給する必要があります)
しかしフードの場合は、オメガ6脂肪酸が不足することはまずありません。
肉類の脂肪は必ず含まれていますし、ヒマワリ油など植物油を使っているフードも少なくありません。
酸化しやすく不安定なオメガ3脂肪酸と違ってオメガ6は損失も少ないです。
またオメガ9脂肪酸は犬の体内で合成することができるので、基本的に補給する必要はありません。
つまりこのブレンドオイルをフードにトッピングすると、オメガ6を過剰に与えている状態になってしまいます。
そしてオメガ3脂肪酸はフードに含まれていても酸化しやすく不足しがちです。
このブレンドオイルではオメガ3の補給は期待できないので、使用しているうちに皮膚やコートの状態が
あまり良くないことになってしまったのかもしれません。
「オイルって大切なのね。あたしも昔ボラージオイルでハゲが治ったことがあったわ」
手作り食でもフードでも、オメガ3脂肪酸を摂取するためには私はまずはフィッシュオイルをお勧めします。
フィッシュオイルはとても酸化しやすいので、このような真空ポンプのものや
このようなカプセルタイプが使いやすいと思います。
小型犬などで人間用では分量の換算がしにくい場合は犬用サプリが使いやすいと思います。
上のネイチャーメイドのフィッシュオイル パールは人間用ですが、一粒が小さいので
量の調整がしやすく、どこでも手に入りやすいものです。
魚にアレルギーがあると言う場合は、海藻由来のEPA-DHAもあります。
オイルの話はややこしくてとっつきにくいけれど、ポイントを覚えておくとフードの原材料や
手作り食の材料の選び方がとても分かりやすくなります。
私もごく初歩の基本的なことしか分かっていないのですが、また分かったことが増えたらブログにして行きますね。