神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.157 棚の本 4

2024-05-02 04:02:15 | 追憶
   
    バッタ:そっと
(1)自分の本棚なのに、見ているとじつにいろいろなものが見つかります。いろいろなものがある理由は、いろいろな理由からですが、その一つにぶらっと立ち寄った古本屋の店頭や古本市で偶然見つけたものを衝動買いするからということがあります。
 おもしろそうで、値段が100円、300円、500円くらいなら、専門外でも、まあ「多少のあらぬ本でも」買ってしまいます。1000円だとどうでしょうか。
 前〔No.117〕に書いた『岩波ロシヤ語辞典』は、最初500円と2度目は300円でした。これは、まだ希望者が現われませんから、手許にあります。プーチン大統領を見ていると、ロシア語ウンザリですが、サラベイ〔うぐいす〕などを聴くと、やっぱりいいですね。この際始めたいという人がいれば差し上げます。オット。
 先日は、神田で『日本思想体系 本多利明/海保青陵』の箱に「50.-」とあったので、「これ50円?」と訊くと「そうだ」というからやはり買いました。
 以前、ビスの台座に1円硬貨を使っていたということがニュースになりましたが、いま、本もそういう時代のようです。それこそ、「枕代わりにでも・・・」ということが、謙遜でなく、実際にその方が安価なためにありそうです。もちろん、そういう本があることもありますが、しかしまだ本は紙でしょう。

   
     柿の種 1

(2)今日は、『現代風俗史年表』(世相風俗観察会編、河出書房新社、1987年)ととりあげます。年表は、職業柄、いろいろなものが手元にありますが、これはその中でも、見ていて楽しいものです。
 「風俗史」とあるので、一見「裏世界」を思わせる印象ですが、あけてビックリ玉手箱、まさにかつての日常の出来事・生活の諸相がまとめられてた興味深い本でした。
 内容からすると、「風俗」でなく「世相」というべきところのまじめな内容と思いますが、「世相」ではつまらないから売れない、「風俗」の方が「人目を引き、覗き見趣味をくすぐる」と見込んだのでしょう、タイトルの字体がそれをうまく表しています。また、だっこちゃんは時代を象徴的に表わすグッズでしょう。

    【カバー】


     【内表紙】
   

(3)副題に「昭和20(1945)年→昭和60(1985)年」とあるのがわかります。(この本そのものについては、図書館ででもご覧ください。運よく古本屋で出会えたら、絶対に買いです。)
 自分に引き付けて言いますと、生まれる前5年と、生後35歳までの40年間の世相をまとめたものとなりますが、自分の意識の面からは、そして、現実の世相〔編者が言う風俗〕の面からは、昭和36〔1961〕年を境にして、その前後で分けられるでしょう。
 言い直すと、私は、終戦から1960年頃までを、父親が徴兵を解除されて戻り、軍人から教員になって、ポツダム宣言にある「平和的且生産的な生活を営む」ことを模索した時代と見ています。そして、それ以降は自分の物心がついた時期としてみています。

(4)今から考えると、わが父も戦争によって道を変えられた一人のようで、40代を過ぎたころ、「40前なら、いまからでも東京へ行って勉強し直す」
 と言っていたのを覚えています。もう、その真相は知るべくもありませんが、今風に言えば、戦争後のケアなり援助なりが必要なところがあったのかもしれません。
 これは、戦争から「無事に帰った人」の、おそらくみなさんがそうだったのでしょう。そして、そういう多くの家庭と同様に、我が家の生活も決して安らかなものであったとばかりはいえませんでしたから、その時代に父や母が何を見ていたかを知るヒントとして見ています。

(5)1960年代以降のところは、自分の小学校高学年から30代の時期ですから、いろいろなことがあったにせよ、自分の責任の時代です。前半生の時期のことして多くの手掛かりを得ています。
 途中は略して、特に昭和60〔1985〕年ころは、留学から帰ってもまだ完全に暗中模索の時期で、一方、子供が小学校への就学年齢になる頃なのに、自分の大学院の在籍年限が終り、いわゆるオーバードクターとなるというような正念場の時期でした。
 この本は、自分にとっての波乱の時期の世相を通してまとめていますから、棚にあって、いつも手に取れるところにおいてあります。
 この本の最初の売値1000円、私が買ったときは500円に訂正されていました。こういうことで編纂者の労苦が報われているのかどうか、気の毒に思われます。

   
    柿の種 2

(5)世の中を「浮世」とも言います。確かに、止め処なく動いて浮いているようにもみえますが、そして、同じような残酷でヒドイ事件が繰り返されるので、うっとうしいこともありますが、しかし、いやな世の中というだけではないでしょう。よくみれば、確実に変化しています。
 悪い例として、サギにしても、昔のサギとは違います。その操作方法も違ってきています。
 良い方では、社会・経済生活が変わり、国民生活も意識も変わってきています。
 この本は、その変遷を鳥瞰するのに資する本と思います。

   
 
 
コメント
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