Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

同系色のお洒落 by 伊丹十三 + Cool Struttin'

2009-11-29 | Jazz
 20歳過ぎ頃、ジーンズ履く時以外で今くらいの季節に着ていたのは多分黒いシェトランド・セーターに白いシャツ、白黒のグレン・チェック(正式名称なんか知りませんでした)のパンツに黒靴、靴下こそミント・ブルーとか色のあるもの加えてましたが、コートも黒っぽくモノトーンの人でした。でも、これは何か違うという気持ちを漠然と抱いてました。もっと子供の頃には青系のものだけを意識的に組み合わせた記憶があります。



二十代前半のある日、伊丹十三著「女たちよ!」を読んで長年のつかえがとれた思いがしました。
『あの日あの時』という話の中で、お気に入りのサン・ローランのタイの色使いを称賛した後、こう書いています。

「同系色のお洒落、という効率のよい隠れ蓑的なお洒落にあきたりないひとには、サン・ローランの色の使い方が大変参考になるはずである。色をたくさん使って成功することは至難のことであって、それゆえ、それだけ次元の高いお洒落ということだろう。」

もちろんこう書いてあるからと言って、クラシックな装いでそんなに多くの色を一度に使えるはずもなく、自ずから限界はあるでしょう。しかし、何時もなんとかしたいと思うがつい同じ傾向のものを選んでしまうとか、DNAに刷り込まれているのか気がつくと着物みたいな色使いなってしまうとか、同系色や少ない色数でまとめるのが常に最上という趣味に囚われている方にとっては、一段上へ背中を押してくれる心強い一言ではありませんか。

数年前に新潮文庫から読みやすくなって再発行されました。1968年の本ですから既に40年以上前にこんな明快に表現されていたとは、才人おそるべしです。

冗談みたいに話と逆のこんな組み合わせは、二年に一度くらいよほどの時しかお勧めしません。国と場所によっては執事に見えてしまいます。

 

このグレーのジャケットの生地はErmenegildo Zegnaのもの、遠目にはタイが同じ生地に見えますが、画像くらいだとメランジの感じが異なるのが見えるかと思います。タイは買収される前のAgnonaの物で、ローマの裏路地にありいつも変った品揃えの店で買いました。この頃Agnonaは良いディレクションだったのか、面白いタイが色々ありました。



間違って一番上の画像を繰り返したのではありません。違いは?
そう靴です。
上はE・グリーンのダブル・モンク、下はEmbassyでどちらも20年ちかくまえの物。
結論から申し上げますと、乱暴なようですがウェル・ドレッサーは黒スウェード靴は履きません。
紺のジャケットにグレーのパンツが良くても、その逆は有り得ないのと似て説明は難しい。
「良い子はマネしないでください」としか言いようがありません。
じゃ、何故そんなの持ってるか?
もう15年くらい履いてませんが、これ一足しかないので引っ張り出して来ました。
私も発展途上という事ですね。

高校生のときに画像の「Sonny Clark / Cool Struttin'」を買って大人になったような気分でしたが、気がつくとたいして成長していないのでした。
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