Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

袖付け

2012-07-03 | Others
 大分前のことですが、ココ・シャネルの回顧展を紹介した番組で、よばれていたデザイナーが往時のスーツを手にしながら、「動き易さを考慮して、とてもアームホールが小さいですね」と言いました。
シャネルの時代以前は、やんごとない階級の女性で働く人はまずいなかったといいます。
その社会進出にシンクロした動き易いウェアこそ、誰からも喜ばれるはずというシャネルの発想でした。
原点は、ボーイフレンド達がひいきにしていた英国の仕立屋の技術で、シャネルも着用していた乗馬服からだと思われます。

わたしがなぜ、肩をあるべきところにあるようにつけるのに必死になっているかって?
それはね、女の肩というものは丸くて、少しばかり前のほうについていて、とてもかわいらしいものだからよ。だからわたしはいうの、これを隠しちゃいけないって!
ところが人がいうには、肩は後ろについているのだそうよ......わたしは肩が後ろについた女なんて見たことがないわ。
「ココ・シャネルの秘密/マルセル・ヘードリッヒ(山中啓子訳)」



画像のジャケットはナポリの何でもない製品で、あまりに無名すぎて誰も買いませんでした。
もちろん既製品ですが、健気にも、ごく当たり前のように小さめのアームホールをそなえています。
袖丈の直しをたのんだ時、直し屋さんが肩からやらせてくれと言うので断りました。
しかし、その日に限って何故かねばられて任せてしまいます。

実際に請け負う人は別で、その職人さんはきっと几帳面な人だったのでしょう。
その人には見慣れないふんわり付いていた袖が、見る影もなく日本の既製服みたいになって帰ってきました。
自分が油断したので、文句は言えません。

以前から「任せてください」と言われるとどうも弱いぜェ。
この話は以前書いた気もしますが......

むかし知人を通じて、「イタリアから、今度シャツ屋の○○が来るからぜひ来てください」とか、「○○シャツの受注会があるので来て」と言われて、付き合ったことがありました。
「カフとカラーバンドは並で、衿だけ一番柔らかい芯に」と注文すると、そこだけ違う芯には出来ないと言います。
また、普段着ている向こうの既製品と同じく「裄は89cmで」と言えば、「そんなに長いのは薦めない、と向こうのメーカーの人は言っていた」とかちょっと怪しげです。
最後は「任せてください」と言っていました。

出来上がったシャツのうえに上着を着てみると、上着の多くがアームホール小さめなので、シャツが腋下近くをトレースするみたいに袖がたくし上がる分短くなりました。

任せてと言われると、私が考える以上の深謀遠慮があっての事と思いたい気持ちが働きます。
相手がとても勉強熱心かもしれないし、それを否定したくない思いもあります。
否定した途端に、自分の知っていることに凝り固まって、聞く耳を失ってしまうことを怖れているのかも知れません。

ところで先のシャネルの言葉で思い出しましたが、真逆に、反り返ったような姿勢で腕を斜め後ろ下に突きだし、休み休み歩く高齢者に遭遇しました。
上着は前が開いているので反るのは簡単ですが、肩甲骨を寄せるみたいにしてみるとなかなか苦しいし、前に進み難いことが分かります。
反対に、読んだだけで「猫背は治る」、という本の宣伝が最近ありました。
まったく関係なかったですね。


働く女性?

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