Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

湿気と乾燥

2020-11-12 |  その他
京都の妙心寺に行ったことのある方なら、天井の龍を見上げながら手を打ったり係の方の解説を聞かれたことがあるかもしれません。
その時、芯去材とか柱についてのお話があります。
寺社建築の多くは桧が使われ、何度か引用させていただいた西岡常一さんの話でもあらゆる面で桧が一番と語っておられますが、妙心寺の柱は欅で、富士山の麓辺りから採られたものだと聞いた覚えがあります。
それを陸路で運んだか筏みたいなものに組んで海路を渡ったか分かりませんが、昨日関西を出た荷物が今日届く現代と違って、ゆっくりゆっくり京都まで運ばれたことでしょう。
その間、風雨に晒されたり十分時間をかけることによって、伐採された木が徐々にこなれて有用な木材になっていくとどこかで読んだ気がします。
ですから急がないことに価値があるんですね。

シャンプーのCMに、毛髪の表面にキューティクルと呼ばれるウロコがあって、それが湿度によって開いたり閉じたりするという解説付きのが昔ありました。
ウールも毛が刈られ羊本体から離れた状態ではすでに生きていない訳ですが、それでも「生きている」「呼吸している」と言われるのは、毛髪と同様表面のスケールと呼ばれるウロコ状のものが開閉して、一定の水分を繊維の中に保つ働きをし続けるからだそうです。
例えば私たちの仕事に絡めるなら、もしその機能がなくて水分が失われていると、アイロンの熱に耐えきれず早く焦げてしまうことでしょう。

扱いにこだわる生産者であれば、刈った原毛はゆっくり労わるように十分な湿度を保った環境で、糸になるなり生地になるまで寝かされます。
生地に織られてからも直後に洗われたり水とは切れない関係で、出荷されると裁断前には蒸気を与えられ、その後も工程の合間合間に加湿を繰り返したりと、服になるまで水とは切っても切り離せません。

しかし一旦服になった後は、「湿気は洋服の大敵」と言われるくらいダメージの元となるため必要以上はいりません。
スタートは木場で水に浸かっていた材木も、建物の完成後まで年中ジメジメした環境では寿命が早まることを思えば、そのあたりも木と似てます。

私のところも最初の失敗を生かし、新しい所は地表から離れており、2.4mの大開口で日照と通気に恵まれている為、さながらサンルームのような環境です。

10月最終週から湿度が40%を下回りはじめ、空気の乾燥が進むとともに肌の乾燥も心配される季節になってきました。
さらに、30%に近づくとかなり危険な領域に入るそうです。
先日もお越しいただいた方が試着しながら、「乾燥しちゃって」と仰ってました。
なかなか丁度良い気候は続かないものですが、皆様も服の環境のみならず乾燥肌のケアも忘れずにお過ごしください!


少し歩いたところにある本牧山頂公園からの眺め

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