森岡 周のブログ

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高次脳機能学とニューロリハビリテーション研究会終了

2016年08月01日 00時49分16秒 | インフォメーション
いや〜今日の研究会は面白かった。ほんと面白かった。
昨日の身体運動制御の研究会に続いてcomparator modelに関してagencyを含めて議論できたし、今日の統合失調症とUSNの代償経路に関する仮説展開もワクワクしました。



慶応大の前田先生からはsense of agencyの定義を改めて聞き、統合失調症のDelayed corollary dischargeの見解を聞き、特に前駆症状の際のagency低下のデータが興味深く、この時期に自殺が最も多くなる疫学的事実との因果を色々と想像することができました。個人的には故・加藤元一郎先生とたまに繋がりがあったことから、鹿島先生から続く、ルリヤ神経心理学をベースとした慶應精神医学に伝統に魅かれるところがありますが、それは次回に。個人的には妄想・幻覚(自己を取り戻そうと必死になり、ドパミンが過剰放出し悪さをする時など)が生じるケースの場合、sense of agencyを引き起こすdorsal network(sensory-motor integration network)が弱まり、saliency networkあるいはそれと深部基底核系の結合が強化されたのではないかと、前田先生の講演を聞き大胆な仮説が生まれてきました。この仮説はPainにもつかえそうです。
生理研の吉田先生はあいからわずユニークなトークですが、彼のバックボーンの知識 http://pooneil.sakura.ne.jp は半端なく、そして意識研究のこれまでの成果に精通(いつかVarelaについても議論したい)していることから、トークの文脈に全く澱みを感じません。何回聞いても理解が促進されます。サルのUSNモデルの作成は大変骨の折れる作業だと思いますが、この研究が完成すれば決定的証拠になると思います。右腹側注意ネットワークの損傷によって、右背側注意ネットワークが弱まり、それによって左背側注意ネットワークが強まる知見が明確になれば、方向性注意メカニズムがはっきりするととてもワクワクしました。私たちのヒトUSN研究と非常に相同性があり、今後互いに研究を重ねることで、USN臨床をリードしていくことができるのではないかと確信しました。原因は腹側ですが、症状固定は背側という意見は、私たちの治療手続きを本当に見直さないといけないと思いました。課題志向型練習のみはある種功罪になるかもしれません。

実はUSNの場合はventral streamの働きが低下することで反対側のdorsal stream(sensory-motor integrationに関わる)が代償するというメカニズムですが、その反対側にあるメカニズム、つまり主体感損失の裏付けられるようにdorsalが弱まることで逆にventralが強まるといったメカニズムは先の統合失調症の幻覚タイプを説明できるのでないかと思いました。すごく楽しかった。この仮説が出た時には。

何れにしても、私たちの研究成果(生野、高村)に今日のすべての話は適応し、共通して聞けたことは脳内ネットワークの「代償」はあまり良くないということでした。
昨日、今日と続くコンパレータモデル(例えばmotor intentionとかefference copyとか)、今日のネットワークであるsensory-motor integration networkとかsaliency networkとかの議論が現場で当たり前にされる時代を願いつつ、教科書を変えるだけのエビデンスを出していかないという意識に駆り立てられました。脳の局在的考えからの脱却を意図的にしていかないとね。。もう扁桃体がどうだとか、前頭前皮質がどうだとかは、一旦棚上げして(もういいや〜)。。

いや〜楽しかった(いろんな場での会では、そうそう楽しいとは実は最近はあまり思わなかったりなんですが、、これもcomparator modelでの説明が可能かも)。そして理学療法士だけで集まる会とかはやはり視点取得が少なくもういいや〜とか、受け身セミナー(受講者のagency損失をむしろさせてないかな?)とかはもういいや〜と思った次第です。発達のためには一度解体し、リセットしないとね。学習(回復)の谷に落ち込まないようにも。

こうしたように、対等に議論できていることを後から考えると、新学術科研費「身体性」のメンバーに入ってよかったなと思っています。入ることが報酬ではなく、議論を高め、深め、知を結集し、最終的には対象者、社会に還元するとがゴールなので。現在自己の意識だけでなく、未来自己の意識へ。

うちの学部学生には未来自己を込めて、comparator modelのメカニズムや、 dorsal attention, ventral attention networkとかは十分に教えていますので、どうぞ指導にこの情報を使ってください。

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