こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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出会えてよかった。

2010-08-24 23:04:09 | めぐみ在宅緩和ケア関連
今日は、第4火曜日なので、めぐみ在宅クリニックでのデスケースカンファレンスでした。
かねてから、ご希望があった市大看護科の学生さんや、市大医学部の学生さんも参加しました。

ケースはうちのステーションでお見送りしたMさん。

奥様が来てくれました。

久しぶりにお会いした奥様は、あの時5キロもやせてしまったままでしたが、とてもお元気で「きゃー!久しぶり!」と満面の笑顔でご挨拶してくれました。

ケアマネも兼任してくれたスタッフSも合流して、カンファが始まるまでの間、なんとも賑やかに話が弾みました。
デスケースカンファで、こんなに明るくにぎやかで良いものかと思うくらいでしたが、Mさんご夫婦の事ですから、これでよいのだと思いました。

奥さんいわく「ねえねえ、これって私たち特別な例なの?私此処にいていいの?」とちょっと心配気。

「いいのいいの。特別なことではなくて、ここでの関わりで亡くなられた方は、あとでこうして反省会みたいな事をするの。もちろんできる限りご家族にも来てもらって、みんなで振り返るのよ。」
「えー。そうなの。」
そして、直後にかかってきた携帯に「あとでね。これから、○ちゃんの先生や看護師さんと反省会するから。」って言っていました。
その言葉に、スタッフみんなの笑顔がこぼれました。

なんというか、Mさんの残した奥様は、そんな素直でかわいらしい奥様だったんです。

最初の経過から、いつものように振り返りました。

*苦しみは・・・
*支えは・・・
*良かったことと反省点は・・・
*今後の課題は・・

苦しみは、やはり痛みと、痰がらみ。そして、呼吸困難。

何を使っても完全にはとれない苦痛は、鎮静をするしかないのですが、それも個人差があります。
課題は、そこをどうクリアするか・・・
今後もずっと引き継がれる課題です。

けれど、苦痛は身体が感じる苦しみだけではないのです。
特に自律の強い方であればなおのこと、自律を失う苦しみは、絶望感へとつながります。
歩きたい。トイレに行きたい。食事がとりたい。妻と一緒にいたい・・・

先日肺がんで亡くなった梨本さんが、「トイレに行けなくなった」ことをとても辛いと言っていましたね。
それも自律を失うと言う事です。

でも、支えもたくさんありました。
何より、いつも頼ってばかりで、危なげでおっちょこちょいの妻が、『自分が絶対頑張って最後まで介護する!』と心に決めて、本当に必死に頑張っていろんな事を覚え、あるときから立場は逆転して、妻が誰よりも頼りになった事です。
心強く、ありがたく、そして、安心して旅立てたとおもいます。

妻は言っていました。
『私ね、主人がいなくなったら、きっと毎日泣いて暮らすのかと思ってたの。でも、介護している時の方が泣いてた・・。
今はなんだかちっとも涙が出ないのよ。』

「そうね。頑張って頑張って、一生懸命やりきったもの。すごかった。えらかったもの。だから涙は出ないのよ。」
みんながそう言いました。

「そうかかもしれない。」と嬉しそうな奥さん。

「主人の病気で、先生や看護師さんやヘルパーさんや、いろんな人と出会えてよかった。すごく恵まれたと思います。でも、出来れば病気じゃない状態で、主人と知り合いになってほしかった。主人はすごい人だから。」

心の底からご主人を尊敬していた奥さんです。
本当に、違う形でこのご夫婦と出会えていたら、もっといろんことを教えてもらえたかもしれないし、もっと楽しい時間が過ごせたかもしれないと思います。

でも、この時に出会えてこそ・・と言う事もありますよね。

出会うべくして、出会ったご夫婦です。

そして、本当に出会えてよかった。

たくさんの出会いと別れ。

どの出会いからも、どの別れからもたくさんのものを頂きました。

これがあるから辞められないんですよね。本当は・・・