茨城県近代美術館で開催中の「ベンシャーン展」に行ってきました。近代美術館は一昨年の「ワイエス展」以来です。
◆茨城県近代美術館
ベン・シャーンを見るのは昔池袋パルコで行われた展覧会から30年ぶり(!)
和田誠さんや山藤章二さんなど著名なイラストレーターの方たちも多くの影響を受けたそうですが、自分も若いころベン・シャーンにはまって、作品を模写したり「ベン・シャーン風」にイラストを描いたりしていました。今回久しぶりの展覧会でしたのでたいへん楽しみでした。
会場に入ってまず新鮮だったのは、ベン・シャーンがあの独自のスタイルを作る前のドローイング(素描)作品。
◆女の顔と手
いや~、こりゃうまい。一瞬ワイエスかと思いました。他にも10点ほど素描が展示されていましたがけっこう緻密な描き込みでデッサン力抜群。やっぱり美術でも音楽でも書道でも「まず基礎をがっちりマスターしてから自分のスタイルをつくる」ってことですね。「型があるから型破り、型がなければ形なし」って名言(どなたかは忘れましたが)の通りです。
さて、これらの素描に始まり、水彩、油彩、テンペラ、インク、版画(リトグラフ)、ポスターなど幅広い作品が展示されていて、ベン・シャーン好きにはいずれもたまらないものばかりですが、やっぱりこの人の最大の魅力は「線」だとあらためて思いました。
◆一篇の詩の最初の言葉 (『マルテの手記』のための版画)
◆9人の笛を吹く笛吹き(絵本の下絵)
線一本一本が生きていて(楽しそうでもあり哀しそうでもあり)感情や温度まで伝わってくるというか。。。原画に近づいて見ると特にそう感じます。そしてその線で描いた「手」「顔」「人」が素晴らしい!
◆レーニン (Time紙表紙)
◆ガンディーと『不思議な少年』
このガンジー。。。ため息モノです。
◆扉Ⅰ(『マルテの手記』のための版画)
たったこれだけなのに。。。
◆チェロを弾くカザルス
「鳥の歌」や「無伴奏チェロ組曲」が聴こえてきそう。
そしてベン・シャーンといえばこの麦畑
◆麦の穂
昔、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読んだ時、ベン・シャーンの麦の絵がずっと頭に浮かんでいました。
さて、ずっとモノクロの作品ばかりですが、水彩やグァッシュなどの作品もたくさんありました。そんな中からいくつか。
◆アルビン・フラー
この表情。ボカシが絶妙。
◆スポレート音楽祭 ポスター原画
色もですが、文字がとても効果的です。
◆ほんとうに偉大な人たちをわたしは忘れない
この白い鳩もベン・シャーンの作品によく登場しますね。
この他にも「ラッキードラゴン」(被爆した第五福竜丸)の連作やポスター、壁画、記事の挿絵や絵本の原画など全300点近くが展示されていて、ベン・シャーンの世界を堪能できました。
◆美術館のすぐ前は干波湖
茨城県近代美術館はエントランスやロビーが広々としていて快適です。しかも空いている 笑。駐車場料金も受付で返金してくれますので車での来場にも便利です。また、お隣は「県立文化センター」なので、コンサート&美術展という豪華コース?も可能です 笑。
(2015.06.10)