宿に着き、部屋に入って驚いた。床の間に、高さ1m、直径30cmはあろうかという木製の男根が、天を突かんばかりに屹立している。

さらに、天井からの垂れ壁の下縁を支える横木部分も、男根を模してあった。 もしかして家族の誰かが予めこれを知っていて、悪戯心でこの部屋を私たちのために予約したのかとも思ったが、フロントで4部屋の鍵を皆が任意に取ったのだからそれはあり得ない。息子達夫婦や孫達が、面白がって入れ替わり立ち替わりこの部屋に来た。フロントに電話して、部屋を変えてもらおうかと思ったが、その前に何かこの事情を説明したものはないかと、案内リーフレットの入った備え付けのクリアブックを繰ってみた。そして不審は氷解した。
案内によると、この土地には古く弥生時代から続く男根信仰があり、近くの神社に男根の形をした神輿が奉納されているとのこと。年に一度の祭礼「どんつく祭り」では、夫婦和合・子孫繁栄を願って、この神輿を女性達が担いで町内を練り歩くのだという。全国でも数少ない奇祭のひとつであろう。この信仰をインテリアに取り入れたのが、くだんの部屋だった。
そうと判れば部屋替えさせるのも大人げない。古代信仰の偶像の部屋に泊まるのも一興と、奇態なその部屋で我慢することにした。
夕食の前に、歩いて5分足らずの「どんつく神社」へ行き、お神輿を拝観した。さすが!3mはあろうかという御神体は雄にして壮!!!
懐かしくも厳かなその御姿に接し「・・・かたじけなさに涙こぼるる」思い。畏みて型どおりの拝礼をした。
幹事役の次男夫婦がたまたま選んだ旅先だったが、夫婦和合と子孫繁栄を願う家族旅行に相応しい場所だった。ただ、部屋の何処に居ても視野に入るタテヨコ2体の御神体レプリカが気になって、頗る居心地が悪く、寝苦しかったことは云うまでもない。
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