定年または引退まで、恙無く無事に憂き世を渡ることができたということは、別の見方からすれば、自分の意思の多くを、抑えたり撓めたりして来たということの証である。
人生における自分の意思の実行度合いは、0から10まであるとして、両極端は現実的でなく、大方の実行率は7分前後に落ち着くだろう。世の中は意に染まないことをしなければならないことが多々ある。
自主自律の精神を尊ぶのが近代人だが、言うは易く行うは難しい。
人間自分の意思をあらゆる場面で推し通すことなどできるものではない。協和・同調・妥協・迎合・雷同なくして、他人と協働や協調をすることはできない。
万一自分の意思が誤っていた場合には、他者との協和で事なきを得ていたはずである。権力者と雖も、いや権力者ほど、自主自律が難しくなるのは、国政を観察していればよくわかる。
意思は個人にとって大切なものだが、自分の意思を推せない時には、必ずそれなりの内外の事情があるということだから、決して無理に強行してはならない。物事は、事情を考慮しないでは叶うことも叶わなくなる。
聡明な人は事情を速やかに理解する。
賢明な人とは、速やかに理解した上で、自分とその事情との整合を巧みに調整することができる人だろう。
政権党には珍しく、賢明な総理を戴いたと思いたい。
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