道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

丁寧な説明

2020年09月18日 | 人文考察

丁寧な説明ができる人は怜悧で感情をコントロールできる人である。それができない人は、頭が雑駁で、物事を相手に分かるよう要領良く要旨をまとめたり、冷静に議論や説明をすることができない。

そのような人でも権力を手にすると、多くの人々を煽り扇動することはできる。情緒に触れるフレーズを乱発し、人々の目を自分に向かせるために、理性や知性から遠ざけようとする。ファシズムのはじまりである。ファシズムのツールはプロパガンダで、いつの時代でも、それを担うのはマスメディアである。

丁寧な説明を口にしながら、それと正反対の言動や行動をとった前政権の政治を、継承すると高らかに宣言する政権が誕生した。丁寧な説明と議論を省き、歴史に無知な政権が二代(菅政権は短期なので無視)に亘りこの国の政治の楫を取ることになる。政治家たちが、国民は説明と議論を省く政治に寛容と読んだから、この政権は出現した。

新型コロナとそれに伴う経済的後退、そして近隣国の軍事的脅威、この3つの不安が、多くの人々を思考停止に陥らせている。

社会不安はファシストにとっては好都合な状況だ。不安に陥った人々は、安心を求めているから、耳触りの好い言葉を鼓吹すれば、一斉に従いてくる。人心の収攬に成功し、支持を強固にすることができる。

ファシズムは「議論と丁寧」を省く。昭和11年(1936年)2月26日から29日にかけての2.26事件は、全体主義への始まりではなく、其処に至るまでのファシズム的風潮の結果だった。議論を省き、丁寧な説明を避けることが社会の風潮になる時、その国は進歩を捨て退歩を歩み始めると見て良いと思う。

インターネット社会は、マスメディアの神通力を無力化する可能性を秘めている。政権のプロパガンダ機関となり下がった既存メディアを糺すことができるのは、ネット内のSNSで交わされる、無数の無名の人々の意見や見解であろう。したがって、中国の様に、ネットが国家の検閲を受けるようになったら、もうこの国に、発展は二度と訪れないだろう。


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