道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

涼を呼ぶ抽水植物

2017年08月22日 | 飼育・栽培
水生植物とは、水中から陸上で生活するよう進化してきた植物の中で、再び生育場所を水に求めた植物群と言われている。その中に、抽水植物というグループがある。
 
抽水植物(オモダカ・シラサギカヤツリ・ヤナギタデ・ミソハギ・ヨシ・マコモ)、浮葉植物(アサザ・ハス・スイレン)、沈水植物(バイカモ・エビモ)などがある。
  
鮎の塩焼きに用いる蓼酢に欠かせない〈ヤナギタデ〉は、野生のものが見られなくなって久しい。需要の季節が限られ、少量しか使わないから生産も増えない。観賞用としてみれば、縦に集合した白い花が美しい一年草だが、華やかさに欠けるのか園芸店で見ることはあまりない。仕方がないから、ネット通販で苗を3株手に入れた。
 
神代の昔に〈豊葦原瑞穂のクニ〉と表現された本州は、まさに抽水植物の天国だったといっても過言ではないだろう。梅雨、台風のもたらす十分な雨量、世界有数の積雪量は溶けて地下に浸透し絶えざる水の供給源となる。太古以来近世まで常習的に発生した氾濫や洪水がつくった沖積平野を豊かな水が潤し、ヨシ・マコモ・ガマなどの繁殖を支えてきた。上古の頃の本州の異称〈秋津洲(アキツシマ)〉も、トンボの翔び交う、見渡すかぎり湿原の光景を示す言葉だろう。
 
そのトンボはおろか、チョウ・ミツバチまでも激減している現代日本は、古代とは別の風土になってしまった。
〈水に沢鷹〉いう家紋がある。それらを見ると、つくづく日本は水に恵まれ水を活かしてきた国であることを痛感する。世界中で、水を図案化して紋章に取り入れている国はどれくらいあるだろう。水に限らず、身辺のごく普通のありふれたものを図案化することも、我々の先祖たちは得意だった。植物・鳥・昆虫・貨幣・武器・農具に至るまで、西洋の紋章の意匠にはあまり見られない特徴ではないだろうか。
 
図案にかぎらず感心するのが、建物の形、衣装のデザインだ。
朝鮮、中国の建築物や服装にその範をとりながら、巧みに自分たちの美意識に適うものに変えている。工学的、構造的な機能はそのまま採用しても、意匠では独自のものを創る。
それは、屋根の形態、屋根の曲線にも顕著に表れている。庭園・被服・焼物・刀剣等など、範は他国にあっても、自分たちの文化的嗜好に適うものに変えてしまう。単に真似が巧いだけではない。改良に創意が凝らされている。
 
彼我の決定的な相違は、曲線と直線の均衡感覚色彩感覚ではないか。また細部にわたる装飾の緻密さもある。
 
日本の太刀の切れ味は定評があるが、美しさの点でも他の追随を許さない。反り・刃紋・拵え、総合の美というものだろう。しかも他に類例のない独創の美でもある。手前味噌になるが、日本人の意匠に対する感覚の鋭さは、独創を生まずにはおかない。決して模倣に終わらない。中国・朝鮮に似て両者を遥かに凌ぐものが歴然としてある。
 
とつおいつ、水生植物から始まった考察もそろそろ締めないと冗長の誹りを免れない。
水辺の植物は涼を呼ぶ。このうだるような暑さに対抗して、水生植物でも植えて涼しさを演出してみてはどうだろう。水鉢に抽水植物浮葉植物の鉢を2つ3つ沈め、メダカの数尾を放す。豊葦原瑞穂の国の住人が永く親しんできた消夏法、エアコンの直接冷却よりは楽しみが深いと思う。
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