道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

現実は計画を裏切る

2023年11月27日 | 人文考察
何事も、人の想いどおりに事は運ばない。人生では、予想は現実に裏切られ続けられるものかも知れない。

トルストイの「戦争と平和」は、現実の戦闘がいかに作戦計画を裏切るものであるか、また、勝敗を決するものは、少数の優れた将軍たちの力量に依るものでなく、名もない兵士たちの奮闘であることを、繰り返し説いている。
つまりナポレオンや参謀たちの頭脳(想像力)から生まれた作戦計画というものは、一旦作戦が始まると、予想外の現実によって様々な蹉跌を来たし、それは時間の経過と共に当初の計画との齟齬を拡げ乖離し、計画はどんどん役に立たないものになる。どんな緻密な作戦計画も、現実の前にはひとたまりもない。

流石のナポレオンも「ワーテルローの戦い」では、前日の雨の影響で野砲の配置計画に狂いが生じ、それが後々まで影響して戦況を立て直すことが出来なかったようだ。
戦場という処は、計画と現実が錯綜する場であり、想定外の事態が頻発する。両軍の参謀たちは、それを予測し得ない。また、味方の計画要素の半分は、敵側の事情で変動するものである。計画当時のままで固定されているものでは無い。

トルストイは、そのような現実が計画を裏切った場合の勝敗の帰趨は、全力を尽くす兵士たちの、個々の奮闘に依るところが大きいと言い切っている。将官たちの指揮にも限界がある。

関ヶ原の合戦でも、石田三成の作戦計画は盤石だったかもしれない。しかし三成の西軍よりも変動要因のより少ない家康の東軍が勝利した。
賢明な三成も、現実には裏切られたのである。

目下、ロシアのプーチン大統領が、現実の手痛い裏切りに遭い続けている。それでも、作戦計画無しに戦争はできない。計画が蹉跌しても、ウクライナで戦っているロシア軍兵士たちは、それを奮闘で補完できるだろうか?



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