日々に摂取する嗜好品、緑茶・紅茶とかコーヒーなど飲み物の効用は大きい。
紅茶は、果物(特に乾燥果物)やミルク、アルコールなどと相性が良い嗜好品で、私はどちらかというとコーヒーよりも多く飲む。三度の食事では欠かさない。
不思議なことに、豚肉を紅茶で茹でると、まるでマジックのように脂肪分が抜ける。茶の木に、脂肪分を分解する効能があるのだろうか?それとも、茶葉の発酵によって生じた成分の作用だろうか?西洋で紅茶が好まれ、中国で烏龍茶が愛飲されてきたのも、彼らの食べ物に油脂が多いことと無関係ではないだろう。
ロシアのサモワールという喫茶用器具の存在は、ロシア人がいかに紅茶好きで、日常生活に欠かせない飲料であるかを物語る。常に暖かい紅茶を飲む習慣は、風土、食生活から来たものに違いない。茶の木には鎮静作用があるが、その効果は緑茶でも紅茶でも変わらないようだ。
もう1つの嗜好飲料の雄、コーヒーとなると、肉とか乳製品など動物性の食品を摂った後に特に欲しくなる飲み物で、ある種の刺激、興奮作用を秘めた飲み物だ。かつて1日に7、8杯のコーヒーを飲んでいた頃、原因不明の脈の乱れが生じた。検査を受けても心臓に問題はなかった。医師に生活習慣を訊かれてコーヒーの摂取量を伝えたら、即座に飲み過ぎと指摘された。以来、1日3杯までにしている。
和食には日本茶の他に合う飲み物はない。コーヒーや紅茶は言うに及ばず、ジンジャエールやレモネード、コーラなども、欧米人が自分たちの食生活に合う飲み物として考案したものだから、西洋料理にはマッチしても和食には全く向かない。魚を主菜とする和食には、渋みのあるお茶が生臭みをとる効果が高いのだろう。
ココアは飲料といってもチョコレートを溶いたもの、脂肪が多く濃厚で、液体デザートのような飲み物だ。胃に負担をかけず満腹感を与えるのは、他の飲料にないものである。山で遭難した時には、コーヒーよりもミルクココアを飲むのがよいと言われている。災害に見舞われた時のために、救難キットに常備したい飲み物だ。
心を落ち着かせるという点では、ミルクに勝るものはない。温めた牛乳や湯に溶かした練乳には、人間の気持ちを安らかにしてくれる成分が含まれているに違いない。赤ん坊がミルクで泣き止むのは、空腹そのものが満たされたことに因るのでなく、空腹が引き起こす不安感を癒す効果がミルクにあるからではないか。不安を鎮めるミルクの効果、これは 大の大人にも効き目がある。以下は自身の体験である。
さる山で、帰途について尾根をどんどん下っていたら、突如道が途切れ、目の前が絶壁になっていた。降るに手掛かりもない断崖で、前には進めない。日は沈み始め、道迷いの不安に駆られた。
とにかく気を落ち着けるしかない。断崖の縁に座り、ザックから練乳のチューブを取り出し、中身を口の中に押し出した。テルモスの紅茶でそれを胃に流し込む。濃厚なミルクの味と香りが、口中と鼻腔に広がった。すると、たちどころに不安感は消え、辺りを具にに調べる余裕が生まれた。
来た道を戻りながら丹念に枝道を探すと、崖から数10m手前の大きな岩塊の地際に、尾根道から90°左手に折れて谷に向かう下山道が見つかった。通常なら岩に標識があるものだが、それらしいものは一切なく、分岐点の踏み跡も草で覆われていた。地図を見ないで帰途を急いだために、分岐点を見逃してしまった。
以来、その後の山行きでは、必ず練乳を携行したが、直接口にするほど緊迫した状況に出遭うことは二度となかった。
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