てんちゃんのビックリ箱

~ 想いを沈め、それを掘り起こし、それを磨き、あらためて気づき驚く ブログってビックリ箱です ~ 

「20世紀の色彩」および「水谷勇夫と舞踏」 愛知県美術館の企画展

2020-09-10 00:15:23 | 美術館・博物館 等
 
 先日愛知県美術館の企画展で、長谷川潔の銅版画の記事を書いたが、その時6つのテーマの企画展で全体が2020年度の第2期コレクション展と命名されていた。以下が全体の状況である。ほかについて書くつもりが終わってしまった。しかし勉強になった展覧会だった。
 今回は、「20世紀の色彩」と「水谷勇夫と舞踏」について記載する。
 

2020年度第2期コレクション展
2020年6月25日(木)〜9月6日(日)
・近代の日本画
・20世紀の色彩
・水谷勇夫と舞踏
・木村定三コレクションの中国陶磁
・没後40年 長谷川潔の銅版画
・プラスキューブ 三宅唄<THE COCKPIT>

1.20世紀の色彩(西洋画)
 20世紀の絵画における色彩の変遷をテーマにした展示。19世紀後半に印象派が従来の絵画の色彩を概念も表現もガラリと変え、20世紀に入ってそれがキュビズムへの流れの過程でまた新しい色彩が提示された。
そして現代の抽象画やポップアート等でまた新しい色彩の概念が提示されている状況を、この美術館所有の作品で展示している。その内容(私の解釈も含めて)を、展示された絵画を例にとり示す。

(1)印象派からキュビズムへ
 印象派の前までは、美術アカデミーにおいて絵画で立体を表現するのは線と陰影が重要であり、色彩はそれらの効果を高める副次的なものとして扱われていた。
 印象派は、屋外の写生の中で色彩こそが人間の視覚体験を生き生きと再現できる可能性を持つものと主張した。そして色彩の純粋さを保つべく、混色をさけて絵具を点描的に並置させる手法をとった。
 20世紀になるとフォービズムの流れの中で、色彩は事象を離れて、作家自身が自分の感情や表現の狙いのために色彩を選択するようになった。



<デュフィ:サンタドレスの浜辺>
(浜辺が、作者の心象風景のように、現実に存在しない色でリズミカルに塗り分けられている。)



<キルヒナー:グラスのある静物>
(ドイツ表現主義の画家、物の色の再現よりも内面的感情から色を決めた)


 それに対してブラックなどキュビズムの作家たちは、色彩を抑制し線や陰影で立体を表現しようとしたが、それは実際の形態を離れた作家の自由な格子状の、時間性を持った揺れ動く立体だった。

 

<ブラック:FOX、ピカソ:長椅子のレオニー嬢(聖マトレル)>
(ともに、銅版画のドライポイント)



(2)抽象表現とポップアート
 フォービズムやキュビズムを乗り越えようとする運動が1940年代に起こった。形を離れ平面の中で色彩のみで表現する画家たちが、アメリカを中心に発生し、その抽象表現が評価された。それには大きく二つの方向性があった。色の塊の即興的なタッチを重要とする方向(ペインタリー・アブストラクション)と、広がりを持った面としての色彩そのものが重要な方向(カラーフィールドペインティング)である。後者には改めて色彩範囲の形を意識したり色彩の素材感に注目したりする画家も現れた。



<サム・フランシス:消失へ向かう地点の青>
(青のそれぞれのブロック内のタッチは前者だが、ブロックごとの色合いの違いは後者の方向性に近い)





 

<ジャン・デュビュッフェ:二人の脱走兵 下は脱走兵の拡大>
(厚く塗った茶の絵具の肌を、削いだり荒らしたりして独特な素材感を出している。二人の脱走兵の書き込みが楽しく、私の好きな絵)

 
 1950年代に消費社会と大衆文化を引用する形で、ポップアートと呼ばれる表現が誕生した。その旗手がアンディ・ウォーホルであり、広告や商品パッケージを連想させる鮮やかな色彩で、肖像写真を少しずらしたように転写した。これは生身の人間が大量生産品のように消費される社会を象徴している。



<アンディ・ウォーホル:レディス アンド ジェントルメン>



<クライン:アルマン(肖像)>
(人間から直接かたどって像を作り、ありえない色を付けた。これも一種のポップアート)



2.水谷勇夫と舞踏

 暗黒舞踏の土方巽を、大野一雄が追悼する公演会の舞台美術は、画家 水谷勇夫によって創作された。公演は1988年と1990年に実施されたが、その舞台装置が再現され展示されていた。水谷は装置も、俳優と同等の存在と主張している。



<公演風景(県美術館のHPより引用)>

 クラシックバレーがジャンプで天上を目指すのに対し、暗黒舞踏はおどろおどろしい不規則な動きで地面を這うよう動く倒錯的な美を示すもの、私は能の暗黒面と感覚的に受け取った。
 舞台装置は黒と白の画材を使って、アクションペインティングで汚したかのようなものである。これを背景に奇妙な踊りがなされる。その時観衆は、一番上にカマキリをイメージした杖を動かし、そして踊りの後半には天井から不気味な大道具が降りてきて揺れ動いて絡み合うとのこと。小さなモニターでそれを放映していたが、なかなか興味深かった。
 こういった舞台美術品を美術館が所蔵するのは面白い。でも創作者自体が舞台で演技している俳優と一体化したものと言っている。この場合は観衆も役割を持っているので、どう芸術を定義し、そしてどのように美術館を訪問した人に展示するかが課題と思う。



<舞台美術>



<天井から降りてきて、宙にとまり震えたりする大道具>



<杖のカマキリの折り紙>



3.終わりに
 20世紀の絵画の流れが、頭の中で整理できた。また舞台美術の美術館コレクション化は、非常に面白い方向性と思った。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 美人画LOVE  名都美術館 | トップ | 「近代の日本画」 愛知県美... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

美術館・博物館 等」カテゴリの最新記事