あの真赤に燃え上がった夕日を見ながら、2人ですごい、すごいって言い合ったはずだよね。
その時、君と顔を見合わせなかったのだろうか。
手をつなぎ、肩を抱かなかったのだろうか。
記憶の中には、ただ太陽に圧倒され、吸い込まれてしまった私一人がいるだけ。
君の顔も、体温も思い出せない。
声も、風の音に変わってゆく。
絶対に、君が僕の隣にいたはずなのに。
色はどんどん失われてゆく。
そして、うわ言のようにつぶやきつづける「すごい」と言う言葉だけが、頭の中を反射する。
本当に、誰かがいたのだろうか。
そしてその夕日は、どのようにすごかったのだろうか。
思い出すままに、色をつけてみよう。
こうかな、ああかな。
赤、黄、朱、紫、・・・・
色をキャンバスに落としていくと、それらは形を変え、自ら動き始める。
いいぞ、もっとだ。
金粉、銀粉を振りかけよう。
顔文字だってばら撒いちゃおうか。
とってもすごくなってきた。
その煌きの中に、私は吸い込まれてしまう。
ああ 朝焼けの中に 君がいる。
君に声をかけ、肩に手をかけようとして 私自身の実体がないことに気が付く。
君は振り向かずに手を伸ばして私の手をまさぐり、肩をよせてくる。
私はそこから少しずつ実体化し、君の体温が伝わってくるのを感じる。
君はゆっくりと顔を向ける。
その顔はパタパタと切り替わり、適切なものが選ばれる。
輪郭が緩み、そして改めてくっきりとして、にっこりと僕に微笑みかける。
「また はじまるね。」
つないだ手が少し汗ばんでいるのを感じる。
そう ここから私たちの新しい歴史がまた始まる。
先日の金色のカエルを再掲したことで、ある進展がありました。 そこでそのSNSで最後に掲載した文章の後半部分を変更して、ここに掲載します。
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