<右 現在のコンクリート製天守閣、左 再建された本丸御殿>
私の住んでいる名古屋では、名古屋城天守閣の再建をめぐってかなりの騒ぎになっている。
まず名古屋城の経緯を書くと、16世紀初頭に戦国の技術の粋を集めて建造され、それが昭和まで維持されて国宝1号となった。しかし第2次世界大戦の戦火で天守閣等 ほとんどが燃え尽きた。
そこで市民および全国からの資金を募り、燃えない城を目指したコンクリート造りの天守閣が1959年に完成した。(エレベータつき)
しかしその老朽化が進み建て替えを検討すべきだということとなった。
名古屋市長およびその周辺は、昭和に焼失前構造の徹底調査が行われ、図面化ができることから完全木造再建を目指すということを主張した。
<完全木造化 天守閣>
これを争点とした選挙も勝利したということで、拙速に始めようとし、木材まで買いこんだ。すでにしてばく大な保管料が発生している。
拙速というのは、この城郭は国史跡で手を入れるのは文化庁の許可が必要なのに、その動きを最初は全然していなかった。文化庁との交渉の中で、城の基礎となる石垣そのものが保護すべき重要遺跡であり火災で劣化しいていることがわかり、その保護対策が重要であることがわかったが、それへの配慮・調査も実施していなかったため、石垣に影響を与えないことを対策した現在の城の解体の許可すら、まだ降りていない状況にある。
<課題となっている石垣、形がくるって荷重に耐えられない部分もある。>
かなり強引に新天守閣を作ろうとする河村市長に対し、障碍者団体が障碍者でも登れるようにエレベータを付けてほしいと要望した。検討したが結局木造再建では1階までしかエレベータを設置出来ないと拒絶した。
現在の木造再建計画側の主張は下記である。
・かつて存在した江戸初期の城が、ほぼ実物に近い形で再建できる。
・ほぼ実物に近いものだから、将来国宝に再指定されることが期待でき、名古屋人の誇りとなる。
・再建することで、名古屋観光に大きく寄与できる。
(名古屋城入場者が、年150万人から350万人に増えるのが、市の思惑)
・費用は500億円かかるが、これはその後の利子や運営費も含めて再開後60年弱の入場料で賄う。よって市民の負担とはならない。
(なお、現在のコンクリート城の耐震化およびリニューアルは、小田原城の例から10億円程度と想定される。)
この木造再建は、それまであまり気にしていなかったが、膝を痛めてから俄然気になりだした。
40年以上前の姫路城、30年前の松本城の天守閣に登った経験から、それらより高い名古屋城の天守閣(本体で36m、石垣も合わせると50mくらい)は高齢者は大苦戦するだろう。天守閣の中の階段は、設置面積を小さくするために、急こう配で狭いから、通常の階段より登りにくい。
膝を痛めた私は当然登れないが、やっぱり登ってみたい。名古屋市民なら城の上から町を見てもいいのではないか。となると別に復元に拘らずに、周辺の老人3人としゃべってみた。
すると2人は木造復元に賛成で、登るなんてことは考えずにそこに置物のように価値のあるものがあればいいという意見だった。1人は頭から河村市長のやっていることが胡散臭いからさっさとやめろという意見で、特にその後の入場料収入は怪しいとのことだった。
河村市長は、高齢者で最近よたよたと歩いているが、多分私が聴いた3人のうちの2人の高齢者と同じで、天守閣は外から見る置物のようなもので、身体の動かなくなった高齢者や障碍者は、天守閣に登りたいなどと思わないのが普通だとおもっているのではないか。
そして、建設にかかる費用は後からになるが入場料収入で賄うことから、市民のものというよりも観光に来る人のためのものとおもっているかもしれない。
ちゃんとした文化財として建設するのはいいけれども、そんなものを作ったら入場制限をして環境劣化を防止するのが筋なのに、観光の対象としできるだけたくさんの人に近付いてもらって収入を得ることに使用しようとしているのはおかしい。
また天守閣に人を入れた時に想定されるのは、階段の大渋滞と各階に疲れ切って座り込んだ多数の人。安全性からも不安になる。これらの人を排出するのはかなり大変とおもう。出来た後の運用を考えているのか。
ちゃんと木造再建した天守閣は、お寺の五重塔みたいに外から眺めるものにしておいたほうがよい。
寧ろ大勢の観光客に対応できかつ安全なのは、エレベータ付のコンクリート製天守閣ではないか。
それではどうすればいいか。天守閣の重要な機能は下記だと考える。
・外観による威圧
・最上階からの展望
途中の階は防御面では重要なものもあるが、観光客にはあまり魅力はない。
上記から現段階での私の提案は、下記である。
・基本は現在のコンクリート城のリニューアル。
・ただし、外観、入り口など1階、そして最上階は徹底的に拘り、木造化する。
・エレベータは、1階から最上階の下の階まで通す。
(最上階への1階分は解除の人にお願いする。ただしスロープ等で移動しやすくする。)
こうすれば多くの人が登ることができ、人がアクセスする1階と最上階は木造建築の素晴らしさを確かめることができるのではないか。そしてそれなりの集客効果も得られるのではないか。
国宝を狙いたいということだが、江戸の石垣、昭和の人の気持ちがこもったコンクリート基本構造、そして江戸の建築を令和で再現させた木造部のミックス構造も充分国宝の対象となるのではないか。
<参考例>
1.Wiki名古屋城 :
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E5%8F%A4%E5%B1%8B%E5%9F%8E
2.名古屋市 復元の進捗状況資料
https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/tenshu_information/
3.木造復元したい人の意見
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/06241059/?all=1
4.石垣から考える再建の課題 仙田教授
https://news.yahoo.co.jp/byline/otaketoshiyuki/20180817-00093317
高松は図面無いし
備中松山は鳥取カラ転勤の先生が測量した
私は復元だから国宝ないかと、所詮ふくぞう
まん中に、エレベーター
選挙目当ての小細工で、うまくいくはずはありません。もっとまともな哲学者が必要です。