おもかげ
2021年01月07日 | 本
おもかげ 「浅田次郎」 講談社文庫
エリート会社員として定年まで勤め上げた竹脇は、送別会の帰りに地下鉄で倒れ意識を失う。家族や友が次々に見舞いに訪れる中、竹脇の心は外へとさまよいだし、忘れていたさまざまな記憶が呼び起こされる。孤独な幼少期、幼くして亡くした息子、そして・・・涙なくして読めない至高の最終章。著者会心の傑作。
解説より

地下鉄でわずか15歳の母親に置き去りにされた竹脇、何もかも封印して生きてきた彼が、重篤のベッドを抜け出して病院を出る。此岸と彼岸を行ききしながら、年代を重ねた母親の姿を追い求める。まもなく人生を閉じようとしているとき、幼く逝った息子の「おとうさん、100歳になったお父さんともう一度地下鉄に乗りたいな」の言葉に竹脇は泣く。息子の名前を叫び続けるも寂しげに手を振って地下鉄に乗って消える。
戦後の東京の地下鉄は復興の象徴で浅田氏には郷愁を誘う乗り物であったことだろう。父を恋う「地下鉄」しかりである。
人は人生を閉じようとするとき幻想や幻覚を見るのだろうか?それを小説の題材にした「おもかげ」であった。
一息ついた三時のおやつは京都のK子さんにいただいた和菓子のときわ木

今年のお正月は予定もないので、年末に文庫本5冊ほど買った。
暖かい部屋でゆっくりと読書を楽しむのが好きだ。