「沈黙のひと」 小池真理子著 文春文庫
新聞で小池真理子のわかりやすい言葉で綴られたエッセイ(森の梟)を読んで、どんな小説を書くのだろうと興味が湧く。まず手にしたのが「沈黙のひと」。作者が亡き父に捧げた哀切な鎮魂歌だ。パーキンソン病を患い脳梗塞を起こして半身まひになったゆえの沈黙。学徒出陣した戦争の世代で戦争のことを口をつぐんで語らない沈黙の時代。その父が残した生きた証を綴った一台のワープロが残されている。老いて施設に入り人間の死を見つめる様子が悲しいまでに詳細に記されて胸が塞がる小説だ。親をこれから見送る人たちには是非読んでほしいと思う。親が子を思う溢れるような愛情と父を思う娘の後悔が交差して切ない。
お昼はひさしぶりのお好み焼き