『すぐ死ぬんだから』 内館牧子著 講談社
まあ面白い、痛快、共鳴、よくぞここまで言ってくれた!と思うセリフの連続。
終活を迎えた78歳のハナは60代までは身の回りをかまわなかった。「所詮もうすぐ死ぬのだから何をやっても無駄よ」と。だがある日、実年齢より上に見られて目が覚める。「肉体の衰えは誰も止めることは出来ないが、そうなってくると人は中身より外見を磨かねば」と。仲のいい夫と経営してきた酒屋は息子夫婦に譲っているが、夫が倒れたことから、思いがけない真実が露呈される。「この年になれば誰もが衰退していくのは当然のこと、それを自然に任せていると、髪は薄くいつも何年も前の服を着て、顔はしみとしわを勲章のように見せながら、背中にリュックをしょってこれが一番楽なのよという爺、婆にはなりたくないわ」と読者には痛い言葉が胸に刺さる。
ハナはウイッグを被りブティックでマダムのアドバイスでセンスの良い服を買い、3センチのヒールを履く。表紙の写真のようなそれなりのおしゃれを楽しむ。すると不思議なことに背中がのびて顔はやさしい笑顔になり、毒舌もほどほどになり、まるで菩薩のような優しさが体に滲むというのだ。100歳まで生きようという活力が湧いてくるというが、、、、、
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私は今ハナさんに言われたように最低の婆だろう。洋服を買っても行くところがないと素通り、誰かとおしゃれなカフェでお茶を飲むこともない。もうやりたいことは全部経験したし、ただ息を吸って吐いて毎日の過ぎていくのを待っているだけかも。100歳なんて老醜を晒してまでお断りだ!!
なんだか寂しいなぁ~と思いつつよし!明日は美容室に行こうかな?なんて触発されかかっている(笑)
久々に代弁してくれるような痛快なセリフにおもわず吹き出したり膝を叩いたり最近にないすっきりとした読後感であった。
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