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マプサウルスの顔


マプサウルスの頭骨は、関節状態ではないが複数の個体の多くの骨が見つかっている。マプサウルスの頭骨は全体として、ギガノトサウルスよりも短く、丈が高く、幅が狭いと考えられている。上顎骨がそれほど長くなく、鼻骨の幅が比較的せまいからである。前眼窩窩はギガノトサウルスやカルカロドントサウルスと同様に大きく、ほとんど三角形で、前後の長さと高さが大体同じくらいである。眼窩は縦長で、涙骨とおそらく後眼窩骨の突起によって上下2つの部分に分かれている。頬骨や方形骨の形と大きさから、下側頭窓は他のカルカロドントサウルス類と同じくらいの大きさであろうとだけ述べられており、鱗状骨など後端の骨がないので正確な形はわからない。

ギガノトサウルスの上顎骨は前後に長く伸びているのに対して、マプサウルスの上顎骨は長さの割に丈が高い。カルカロドントサウルス類の上顎骨の表面には粗面(あるいは文様sculpture)があるが、マプサウルスにもみられる。ギガノトサウルスの上顎骨では外鼻孔の後方は比較的なめらかであるが、マプサウルスの上顎骨では粗面の範囲が長さ全体にわたっているという。
 ギガノトサウルスでは、上顎骨の本体(水平突起)の背側縁と腹側縁がほとんど平行subparallelになっているが、マプサウルスではカルカロドントサウルスと同様に、背側縁と腹側縁は後方に向かって先細りtaperになっている。

前眼窩窓より前方には1個の穴、つまりmaxillary fenestraだけがある。マプサウルスのmaxillary fenestraは比較的小さく、穴そのものは側面からは見えないが、穴の周囲の丸い窪みが見えている。ギガノトサウルスのmaxillary fenestraはより大きく、穴自体が側面から見えている。
 上顎骨を内側からみると歯間板が互いに癒合している。マプサウルスでは上顎骨に12本の歯がみられる。カルカロドントサウルスでは14本あり、ギガノトサウルスでは明らかでないが少なくとも12本ある。

鼻骨の背面は、カルカロドントサウルスやギガノトサウルスと同様にごつごつした隆起が発達している。アロサウルスやシンラプトルなどでも鼻骨の側方の縁には隆起がみられるが、カルカロドントサウルス類ではより正中の方まで隆起が広がって、鼻骨の前方部の背面全体がごつごつしている。
 涙骨の背方部にはアロサウルスやケラトサウルスなどのような尖った涙骨角はなく、ギガノトサウルスと比較して低めの稜となっている。
 カルカロドントサウルス類では眼窩の上にひさし状の骨があり、supraorbital shelfという。ギガノトサウルスとマプサウルスでは、supraorbital shelfは主に眼瞼骨palpebralという骨が後眼窩骨と癒合してできている。マプサウルスの眼瞼骨は、ギガノトサウルスと比べてやや延びており、その側方の縁が腹側に曲がっているので、頭骨の側面からみると眼瞼骨の背面が見えている。眼瞼骨はカルカロドントサウルスにもあるようである。

ギガノトサウルスとマプサウルスでは、下顎の歯骨の前端が上下に拡がっており、腹側端に突起ventral flangeがあるので、下顎の前端が角張っている。マプサウルスではいろいろな大きさの個体の歯骨が見つかっているが、5 mくらいと思われる幼体の歯骨でも前端は拡がっている。しかし、ギガノトサウルスと比べるとマプサウルスの歯骨の前端は丸みを帯びているようである。(歯骨の前腹側縁が、より後方に傾いていると記されている。)歯骨の前端の丈の高さは、最も丈が低い部分に比べて、幼体で18%、最も保存の良い標本(亜成体?)で24%大きいという。ギガノトサウルスの成体では33%に達するものがある。カルカロドントサウルスでは、従来下顎は見つかっていなかったが、2007年のカルカロドントサウルス・イグイデンシスの報告で、歯骨の前端が記載された。それをみるとやはり歯骨の前端は拡がって、角張っている。

マプサウルスの完全な頭骨を見た人はいないが、長さや丈の高さなど全体的には、ギガノトサウルスよりもう少しカルカロドントサウルスに近い形のような印象を受ける。

参考文献
Coria, R. A., and L. Salgado. 1995. A new giant carnivorous dinosaur from the Cretaceous of Patagonia. Nature 377:224-226.

Calvo, J. O., and R. Coria. 2000. New specimen of Giganotosaurus carolinii (Coria & Salgado, 1995), supports it as the largest theropod ever found. Gaia 15:117-122. (dated 1998, published 2000).

Coria, R. A., and P. J. Currie 2006. A new carcharodontosaurid (Dinosauria, Theropoda) from the Upper Cretaceous of Argentina. Geodiversitas 28:71-118.


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