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アクロカントサウルスの頭骨の新しい情報




Copyright: 2011 Eddy, Clarke.

 過去の記事にもあるように、アクロカントサウルスの系統上の位置については、アロサウルス科とする意見とカルカロドントサウルス科とする意見があって一致していなかった。最近の系統研究の流れでは、カルカロドントサウルス科という見解が定着してきている。

 アクロカントサウルスの最も保存の良い頭骨の標本NCSM 14345については、 Currie and Carpenter (2000) によって記載されたが、当時はまだクリーニング(プレパレーション)が不完全で、頭骨の個々の骨は分離しておらず、内部に堆積物が詰まっていた。そのため、主に頭骨の外側の形態だけが記載された。その後、ブラックヒルズ地質学研究所とノースカロライナ自然科学博物館によりプレパレーションが進められ、個々の骨が完全に分離された。そこで今回、著者らはほぼ全ての骨について、これまで観察できなかった内面や関節面の形態学的特徴を記載した。また、新たにアロサウロイドの系統解析に有用な24の形質を見いだし、従来用いられた153の形質と併せて、18種類の獣脚類について系統解析を行った。その結果、最近のいくつかの系統解析と同様に、アクロカントサウルスはカルカロドントサウルス科に含まれるという結果が得られた。

 すでに相当研究されている種類ではあるが、今回の新しい知見を追加した研究もまた、膨大な作業を含む労作である。またシャオチーロンやコンカヴェナトルなどの新しいカルカロドントサウルス類との比較もされているので興味深い。本文は、従来記載されていなかった特徴に重点をおいて記載されている。

 鼻骨の表面では、外鼻孔の周りに鼻孔窩narial fossaという浅いくぼみがあって、後背方にのびている。この鼻孔窩narial fossaは、アクロカントサウルス、カルカロドントサウルス、コンカヴェナトルでは細長くなっている。一方シンラプトル、アロサウルス、ネオヴェナトル、モノロフォサウルスでは鼻孔窩はもっと丸く、卵形をしている。
 鼻骨の側方稜lateral ridgeは、ギガノトサウルス、マプサウルス、カルカロドントサウルス、ネオヴェナトル、コンカヴェナトルでは粗面が発達しているが、アクロカントサウルスではシンラプトルやアロサウルスと同様に比較的なめらかである。

 上顎骨の前上顎骨との関節面は、アクロカントサウルスではシンラプトル、マプサウルス、エオカルカリア、シャオチーロン、カルカロドントサウルスと同様に後背方に傾いている。一方アロサウルス、ネオヴェナトル、モノロフォサウルスでは関節面が垂直に近い。
 前眼窩窩にはpromaxillary fenestra とmaxillary fenestraがある。アクロカントサウルスのpromaxillary fenestra とmaxillary fenestraの大きさと位置は、エオカルカリアに最もよく似ている。エオカルカリアの上顎骨には、さらに大きく丸いaccessory fenestraという孔があるが、アクロカントサウルスの上顎骨にも同様の孔accessory foramenがある。ただしエオカルカリアに比べるとずっと小さい。
 上顎骨の後方突起posterior ramusの後端は、エオカルカリアやシャオチーロンと同様に腹方に屈曲している。他のアロサウロイドでは後端はまっすぐである。
 内面では、上顎骨は棚状の部分で口蓋骨と結合している。この口蓋骨との関節面の前端は、アクロカントサウルスではエオカルカリア、カルカロドントサウルス、ネオヴェナトルと同様に8番目の上顎歯槽の上にある。アロサウルスとシンラプトルでは、関節面の前端は7番目の上顎歯槽の上にある。
 歯間板は癒合している。水平の稜線が歯間板を横切っており、これをgroove for dental lamina という。この稜線は前端では下がっており、中程では高く、後方に向かってまた下がるというアーチ状の曲線をなす。このアーチ状のラインはネオヴェナトル、エオカルカリア、カルカロドントサウルス、シャオチーロン、マプサウルスと共通している。シンラプトルとアロサウルスではこの稜線は直線的である。

 涙骨の前方突起は比較的まっすぐで長いが、背側からみると側方にカーブしている。アクロカントサウルスのこの曲がり方はカルカロドントサウルスやギガノトサウルスと同様である。一方シンラプトルとアロサウルスでは前方突起は背側からみてまっすぐである。

 後眼窩骨の前背方にはごつごつした眼窩上突起orbital bossがあり、眼窩の上をひさし状に覆っている。この突起は側面から見ると、全長にわたって前後に伸びる曲線状の血管溝vascular grooveによって区切られている。アクロカントサウルスのこのような突起の形態は、コンカヴェナトル、マプサウルス、カルカロドントサウルスと同様である。エオカルカリアでは血管溝が眼窩上突起の前半部に限られている。この突起は、ギガノトサウルスやマプサウルスのようにpalpebral眼瞼骨と後眼窩骨が癒合してできたものかもしれないという。(ただしアクロカントサウルスでは眼瞼骨と後眼窩骨の縫合線は見られないという。)
 後眼窩骨の腹方突起には、眼窩内に突出する眼窩内突起intraorbital process (下眼窩突起suborbital process, suborbital flange) がある。アクロカントサウルスの眼窩内突起intraorbital processは厚く頑丈で、カルノタウルスのものに似ている。カルカロドントサウルス、コンカヴェナトル、エオカルカリア、ギガノトサウルスのような他のカルカロドントサウルス類にも眼窩内突起はあるが、それらの種類ではもっと薄く比較的小さい。アロサウルス、モノロフォサウルス、シンラプトル、ヤンチュアノサウルスには眼窩内突起はない。

 頬骨の後方突起の先端は、2つの枝に分かれて方形頬骨の前方突起と結合している。この2つの枝の背側の方を背側方形頬骨枝dorsal quadratojugal prong、腹側の方を腹側方形頬骨枝ventral quadratojugal prongという。アクロカントサウルスでは前者が後者の2倍以上丈が高いが、この比率はアロサウルス以外のほとんどのアロサウロイドでみられる。背側方形頬骨枝と腹側方形頬骨枝の間に、小さな小付属枝small accessory prongが外側面にある。このような小付属枝は、マプサウルス、ティランノティタン、そしておそらくカルカロドントサウルスにもあるが、アロサウルスにはない。

 系統解析の結果得られた分岐図では、アクロカントサウルスはカルカロドントサウルス科の中に位置することが強く支持された。ここではヤンチュアノサウルスも扱われており、「シンラプトル科」の位置に入っている。また最近のBrusatte and Sereno (2008) やBrusatte et al. (2009)と同じく、アクロカントサウルスとエオカルカリアが最も近縁(姉妹群をなす)となっている。
 この系統関係は、層序学的データや体長body sizeの分布からみても、アクロカントサウルスをアロサウルスと近縁とする説よりも合理的(最適化される)としている。

参考文献
Eddy D. R., Clarke J. A. (2011) New Information on the Cranial Anatomy of Acrocanthosaurus atokensis and Its Implications for the Phylogeny of Allosauroidea (Dinosauria: Theropoda). PLoS ONE 6(3): e17932. doi:10.1371/journal.pone.0017932
Copyright: 2011 Eddy, Clarke.

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Shinzenさんの恐竜フィギュア展

東京・吉祥寺のギャラリー・ボンブラで開催中の「ストリート・ウィンドー展2012 竹内信善 恐竜フィギュア」に行ってきました。
 今回はティラノサウルスの作品が中心で、新作は卵から孵化したばかりのヒナから幼体、亜成体、成体までを表現した「ティラノサウルス成長曲線」のようです。大きい幼体ないし亜成体の、後肢の長いのはJaneを参考に作られたようです。大型の成体はがっしりした体格で、背中に羽毛ではなく、ワニ類の鱗甲のようなトゲが並んでいる点が良いですね。また、座りポーズの作品もあります。

 ポスターカードとガレージキット「ティラノサウルス2009」を購入させていただきました。


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