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肉食の系譜
主竜形類の系譜

Copyright 2016 Ezcurra, M.
恐竜の分類ならある程度知っているが、主竜類の外側となるとなじみがない。いきなりプロテロスクス類とかエリスロスクス類とかいわれてもさっぱりイメージがわかない、という方も多いだろう。まことにもっともである。全体の構図をひと通り説明してから個々のグループを説明すべきだろう。
恐竜、翼竜、ワニ類が主竜類に含まれることはお馴染みだろう。その外側はどうなっているのだろうか。この辺からスタートしないといけない。当然ながら、よくニュースに取り上げられる恐竜や翼竜以外の主竜類、主竜形類についても、すさまじい勢いで研究が進んでいる。2020年にはチャナレスクスの再記載、ポポサウルスの再記載、エウパルケリアの再記載などが、マイクロCTなどの新しい手法も駆使して研究されている。このあたりはもともと知識がないので、少しはチェックしておかないとまずいと思われた。
日本語のウィキペディアには主竜類はあるが、「主竜形類」という項目はなく、「主竜様類」がある。「主竜様類」の中の記述は最近の研究を大体反映しているようであるが、まだ書きかけの扱いである。主竜類Archosauria を含むより大きなグループとして主竜形類Archosauriformes があり、さらにその外側に主竜様類Archosauromorphaがある。(訳語は古生物学会の用語集などを参照すべきかもしれない)ここでは最新の系統研究の1つとして、Ezcurra (2016)の系統図を見ながら大体のようすを確認してみたい。
まず双弓類の中は主にコリストデラ類、鱗竜形類、主竜様類の3つの系統に分かれる。主竜様類Archosauromorphaの中から、タニストロフェウス類Tanystropheidae、アロコトサウルス類Allokotosauria、リンコサウルス類 Rhynchosauriaが順次分岐し、さらにプロラケルタなどを除いたものが主竜形類Archosauriformesである。主竜形類の中ではプロテロスクス類Proterosuchidae とエリスロスクス類Erythrosuchidaeが順次分岐し、残りのものが真鰐足類Eucrocopodaとなる。真鰐足類の中でエウパルケリアなどが分岐し、残りが広義のプロテロチャンプサ類Proterochampsiaと主竜類に分かれる。広義のプロテロチャンプサ類Proterochampsiaは、水生適応したドスウェリア科Doswellidaeと陸上に戻ったプロテロチャンプサ科 Proterochampsidaeに分かれている。
主竜類Archosauriaは鳥頸類Ornithodiraと偽鰐類Pseudosuchiaに分かれる。鳥頸類Ornithodiraには翼竜類、シレサウルス類、恐竜類などが含まれる。偽鰐類Pseudosuchiaには植竜類Phytosauria、オルニトスクス類、アエトサウルス類、ラウイスクス類、ワニ形類などが含まれた。この後、テレオクラテルなどの発見により鳥頸類Ornithodiraにアファノサウリアを加えてアヴェメタターサリアAvemetatarsaliaと呼ばれるようになった。偽鰐類Pseudosuchiaもいろいろと研究が進んで、ポポサウルス類が増えたり、いわゆるラウイスクス類は多系群となったりしている。
もちろんこれが確定ではなく、他の研究では異なる解析結果となっている。Ezcurra (2016)ではプロテロチャンプサ類が主竜類と姉妹群をなしているが、Nesbitt(2011)などの研究ではエウパルケリアなどが主竜類と姉妹群をなしている。植竜類Phytosauriaも主竜類の外側にきたりしている。
そういうわけで主竜類以外の主竜形類としてはプロテロスクス類、エリスロスクス類、エウパルケリア類、プロテロチャンプサ類などがあり、これらが主竜類の共通祖先に近い動物である。
参考文献
Ezcurra (2016) The phylogenetic relationships of basal archosauromorphs, with an emphasis on the systematics of proterosuchian archosauriforms. PeerJ 4:e1778; DOI 10.7717/peerj.1778
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