愛犬を抱く永田照喜治さん
(撮影/沢海厚さん)
昨日は「スパルタ農法」「ルーツ農法」とも呼ばれる永田農法の生みの親、永田照喜治さんに会いに、浜松へ行ってきました。永田農法は最小限の水と液肥だけで野菜や果物の持つ自然の力を引き出し、栄養価や糖度の高い作物をつくる独自の農法で、永田さんが研究と工夫の末に確立したものです。痩せた土地でもおいしい野菜や果物を作り続け、83歳になった今も、国内はもとより海外へも農業指導に出かけています。
今、日本では農業人口が減少しているから、派遣労働者で失業した人たちを取り込めないか、などと言っている人がいるわけですが、永田さんは「農業人口が減ることなど、30年以上前から統計的に分かっていたこと。むしろ減ってもいいんだ。やる気のある人以外やらんでよろしい。農業も装置化して耕作ロボットを使えば、人手がなくても大規模農業は可能だし、水やりや肥料やりも電子制御で無線でやればいい」という意見をお持ちの方。
だいたい「農業と介護をバカにしている」とおっしゃる。そうだ、そうだ。介護のなり手がないといえば、安い賃金で働く外国人を引っ張ってきたり、「何をやっとるか」という感じで話されたので「まったくそのとおりですね」と言いながらも、官公庁の広報誌には永田さんがいうところの「農業人口が減っても大丈夫」とか「農家にもっと自由に農業をさせてくれたら、自給率は上がる」とかは、書けないな。書いてもすぐに差し戻されるか、真っ赤っかになって返ってくるか、でしょう。
ひと昔まえなら、官公庁の広報誌で取り上げることもなかったでしょう、農政とは対極にいるような人だから。今はすっかり穏やかになられたのかもしれませんが、気骨のある好人物でした。個人的には、永田さんのような作物つくりがいいと思いますね。作物の生命力を引き出す育て方は、ヒトの自然治癒力を信じる暮らし方に通ずるもの。
食べさせて頂いたトマトのしっかりとした皮や旨味に驚き、また芯まで食べられるエグミのないパイナップルに舌鼓を打ったのでした。永田農法恐るべし。
浜松へは東名高速道路沿いの美しい桜を見ながら向い、取材後は浜松駅前の「八百徳」で美味しい鰻を食べ、帰りは夜桜を見ながら帰ってきました。もちろん帰宅後も仕事が待っていたけれど、鰻で精をつけたので夜中まで気力も持ったのでした。