まさか「レーザー手術」という選択肢があったとは、思いもよらなかった。
そうだった、笹塚動物病院のホームページには「得意分野は半導体レーザー、炭酸ガスレーザー、内視鏡を利用した傷の小さな治療です」と書いてあったっけ。
順番が来て待合室に入ると副院長先生が、局部麻酔によるレーザー手術ですぐにでも切除は可能であること。ただし、傷口は焼き切った形になるので(つまり縫い合わせていないので塞がりにくいということ)、舐めることによる悪化にどう対処するかといった話をしてくれた。
そして、ブナのイボの場所ならレーザー手術で問題なかろうが、クリの場合は、どうしても圧のかかる場所(伏せをすると床に当たりやすいなど)であり、よく動かす関節部分なので、舐めることはなくても何かの拍子で傷口が擦り切れたりする可能性があるし、もし切除しても再びイボができないとも限らない場所だという。
それは一般的なメスによる切除手術でも同じだろう。
先生は、本人(本犬)が気にしていないようなら、万が一何かでちぎれそうになって出血したなどという場合を除いて、無理に切除しなくても、むしろそのままにしていた方が安全ではないかと思うというのだ。
ということで、クリのイボの切除は、今回は見送ることにした。で、ブナのイボをどうするかということになった。
傷口を舐めたことで、なかなか治らずに苦労したほかの犬の話を聞かされる。エリザベスカラーをさせればいいのだが、大型犬のそれがどれだけストレスになるか先生も分かっていて、できればそれをせずにすめばいいと思っているようなのだ。
マニュアルどおりではないところがうれしい。
レーザー手術は毛細血管もレーザーで焼き切るため、ほとんど出血もしないらしい。時間にして20分程度だと聞き、正直とても驚いた。
ブナが傷口を舐めることを心配している先生方に、家に帰れば、色のない透明のエリザベスカラーもあるし、チューブタイプのカラーもあることを告げ、「もしブナが傷口を舐めるようならカラーをすることにしようと思う」と話すと、「飼い主さんがそれを納得しているなら……。帰宅まで小一時間なら、局部麻酔もまだ効いているでしょうから、帰るまでは大丈夫かな」と副院長先生がいい、ブナのイボの切除が決まった。
美人先生が伏せをさせたブナにジャーキーを少しずつあげることで、ブナの気をそがせている間に、副院長先生がイボの周囲の毛をバリカンで剃り、麻酔薬を数カ所に注射した。その後、ブナは地下の治療室へ連れられて行った。
20分くらいクリに散歩をさせて病院に戻ると、私たちを見つけたブナが診察室の中でしっぽを振っている。
美人先生が「特に傷口を気にしている様子はないので大丈夫だと思いますが、念のためこれを。傷口に血がにじんだり、痛がって気にするようなら塗ってあげてください」と、皮膚用外用薬を渡してくれた。
「あっ、そこにゴミがついていますよ」などど言われたブナのイボ。思いのほかあっけなく取り去られたブナのイボ。
傷口はまだ少し腫れているけれど、帰りの車の中でもまったく気にする様子もなく、また帰宅後も、疲れたのか、ブナはずっと大人しく寝ている。
ブナの処置料は5000円。レーザー手術じゃなければ、改めて手術の日程を決めて出直すことになるし、何日か後に抜糸にも行かなければならない。先生方は私が遠方から何度も通う手間も考えてくれていたようだった。
ブナに負担もかからず、こんなにあっさり気になるイボが切除されて、本当にうれしい。クリのイボに関しても今後の方針が持てたし、心配事がなくなってホッとした。
気持ちがほどけたせいで、毎年惑わされることもないのに、思わずボジョレー・ヌーヴォーのヴィラージュというヤツを買ってしまった。今夜はワインで乾杯だ。って、いい思いするのは私だけ、ですね。