23日、NHKが1987年に制作した「特集・チェルノブイリ原発事故」を見た。当時放映したその特集と、現在進行形の福島原発事故を交えて検証するといった構成のようだった。「ようだった」というのは、24年前に作られた番組を見て茫然としてしまい、その他の内容があまり頭に残らなかったからだ。
24年前に制作された番組では、拡散したセシウムを何度も「死の灰」と呼び、ホットスポットの存在や放射性物質の拡散がいかに広範にわたるか、除染状況や放射性物質を被曝したことによる身体への影響などが、丹念に検証されていたのだ。
NHKはなぜ、あれほど放射性物質の拡散する特徴などを捉えておきながら、フクイチの事故で逃げ惑う人々を、「死の灰」がより多く降り注ぐ場所に留まらせ、同心円のみで避難地域を決めたことに異議を唱えず、「直ちに身体に影響はない」「安全なレベルである」と報道し続けたのか。
「死の灰」を連呼した当時のナレーターは、今、どんな気持ちで福島原発の事故を捉えているのだろうかと思う。「放射能から子どもを守りたい」と訴えるお母さんたちを、集団ヒステリーだと切り捨てることができるのだろうか。あの番組制作に関わったスタッフ、そして、昨日、司会をしていた女性アナウンサーは、「人として」どう感じているのだろう。
チェルノブイリと同等の事故レベルであることが発表されても、他国の事故は重大で、自国の事故は軽度だと言いたいのか、何を意図して、昨日、あの番組を放映したのか、私にはよく分からない。