昨日、休みが取れた文筆家の千恵ちゃんと高尾山に行った。二人で高尾山に行くのは2度目のこと。高尾山のお話はまた別の機会に譲るとして、その道中、13日に94歳で亡くなったやなせたかしさんの話になった。
日曜日の午後、千恵ちゃんがBSでやなせたかしさんのインタビューの再放送をしていることをメールで教えてくれたのだけど、その番組のインタビュアーの問いかけ方がイマイチだったという話から、やなせさんの誠実さや懐の広さの話になった。
やなせさんが編集・制作していた『詩とメルヘン』は、中学・高校を通して私の愛読誌であり、何度も詩を投稿した懐かしい雑誌である。あの頃、誌面を飾っていた葉祥明さんや黒井健さんは今では著名な画家、絵本作家になっている。
一昨年、取材で愛媛県内子町を訪れた際に乗った宇和島行きの電車は、アンパンマンの絵が描かれたウキウキとした気持ちになる楽しい車両だった。
やなせさんは高知県香美市にある実家の跡地を公園にして、そこに埋葬されることを希望していたという。お墓に置く石碑に刻む詩はすでにアンパンマンミュージアム振興財団に託されていたそうだ。
東京新聞に、やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団が提供してくれたその詩が掲載されていた。亡くなられた方の“生きる姿勢”というのも変だけど、それでもやなせさんの生きる姿勢が表れている、やわらかで温かい思いに触れ、涙がこぼれた。
柳瀬家はここにあった
三百年以上続いた旧家だが
今は影もかたちもない
一族の墓石は
後方の
山の中腹にある
ぼくはここでねむりたい
故郷の土はあたたかい
木蓮科のマグノリア
一本の朴ノ木にぼくはなりたい
季節には
はにかみがちに
白い花を咲かせて
風の中でゆれていたい