データになる資料もその説明もなく、ただ「シミュレーション」だという理由だけで、ありがたそうに物事が正当づけられている。岩手県県土整備部の防潮堤建設や宮古市などの災害危険区域に関する条例などが典型的である。検証されていないシミュレーションを根拠にして計画が実行されようとしている。…
一方では、検証されたシミュレーションもある…
☆
宮古東方沖にもう一つの震源地(?)東日本大地震
昨年の夏頃だったか?また、新聞だったか、テレビだったか? 今村文彦東北大学教授(地震工学)が興味深いことを発言していた記憶がある。東日本大震災の震源地は主に宮城県仙台沖一帯であったが、さらに北の岩手県沿岸の津波の遡上高や被害状況の規模をみるとシミュレーション上このあたりにもう一つの大きな震源がなければおかしい。そう言って、岩手県宮古市の太平洋東方沖に指を指していたという記憶である。シミュレーション上の仮説…。…下図の × の位置 (3.11震源地から北東に190km離れた地点…)
※あくまでも私の個人的記憶である。記憶違いもあるかもしれない.
(図はWikipediaより)
× 追加震源地はその北東190km
ただの見当ではなくデータや現地調査に基づいたシミュレーションを重ねた研究の上での見解だろうと思ったが、しかしそのような現実の震源地の原因痕跡は示されず、やはり「仮説」の範囲を出ない学説だろうと考えていた。
巨大津波、原因は海底の地すべりか?
3月1日の NHK 午後7時からのニュースを見て驚いた。アメリカの専門家らで作る国際研究チームによると岩手県の沿岸でなぜ20メートルを超える大津波になったのか等は「海底の地すべり」によるという見解が出たというのである。
津波高のシミュレーション:赤い部分は地震の津波と地すべり
の津波が重なってできた。
海洋工学の専門家などで作る研究チームによると中心震源地から北東に190キロ離れた海底で、地形が地震の前後で変わっているという。まさに今村教授の見解が、そこで「検証」されていると思ったのであった。地すべりの規模は南北に40キロ、東西に20キロ、厚さ最大2キロで、土砂の量は500立方キロメートル、東京ドーム40万個に相当するという。
シミュレーションは仮説にすぎない。検証が必要
今村教授の見解は、しミュレーションの積み重ね等によってそこに大きな力の存在を予想した。それを第二の震源地説として推測したのであろうがまさに国際研究チームによって検証され実証されたといえる。震源地と地すべりの違いはあるが、岩手県沖の大きな力の存在が証明されたのではないかと思う。単なる「仮説」がこうして一歩、一歩、科学的に実証されていくという人間の英知に驚かされた次第である。
かといって、証明されたのはほんの小さい事実にすぎないということも又事実である。地すべり説自体が、大部分を模擬実験、コンピュータによるシミュレーションに依っている。実物データ、実地調査の積み重ねと共に歩んでいかなければならない。研究チームでは日本の研究者と協力して、地滑りの痕跡など現地調査を進めていきたいとしている。
[関連記事] インドネシア火山地すべりによる津波 2018.12.26
※「シミュレーション」は永遠の仮説であることを再度繰り返しておきたい。とくに宮古湾に張り巡らすつもりの岩手県県土整備部の防潮堤については、沿岸住民の景観、環境、漁業、そして生死にかかわるものであるから軽々に賛同することはできない。水門を含めてその湾内一律という考え方、その10.4mという高さ、またその強度は、どこに根拠があるのか疑わしい。シミュレーション(=仮説)はそのまま安心の根拠にはなり得ない。閉伊川水門や防潮堤の検証はどうするつもりなのか?
大船渡市は、県土整備部のシミュレーションに対して、市独自のシミュレーションを実行して対置している。一つの見識、一つの検証作業であると思う。なんとしても、どんな方法でも検証は一歩、一歩進めなければならない。そうして市民の確証を高める事が大事だ。
http://blog.goo.ne.jp/traum2011/e/f4fdb8d1b5cde262c9bbcb8006958ce2