第一防潮堤のブロック撤去から着手(2013.5.14)
ブロックはいろいろに呼称され親しまれてきた。「突起物」「ぼこぼこ」「てっぺんのギザギザ」「櫛の歯状ブロック」「防潮堤の上のブロック」「コンクリートの一部」「転落防止の安全施設」「墓の形」「犠牲者の慰霊のための人柱を模したもの」「鎮魂の墓標」…
いつも第一防潮堤の足もとにあったブロックの隊列
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(毎日新聞 地方版「宮古の津波防潮堤:吉水元市部長が視察、<鎮魂の墓標>説に共感」2113.3.21)
田老地区内外の人々がいろいろな呼び方をして、昭和33年第一防潮堤(当時は防浪堤)の完成から半世紀以上、ものも言わずそこに立ち続けた謎めいたブロックの隊列を思いを込めてふりかえっている。いつもそこにあったのに…いま言われてみると…
鎮魂の辞
(やっぱすっ。田老町だべ~なぁ~! 岩手県宮古市田老町からの情報発信ブログ<第二線堤工事> 2013.5.14 コーケやんコメントの転載=部分修正)
成り行きと言えば成り行きの中にあるが田老町が宮古市と合併したのがそもそも悔やまれる事かもしれない。田老の「防浪堤」建設は関口村長以下村民町民の田老の誇りであった。今次津波でその役割を終えたといえX型防潮堤の存在は防災の世界遺産である事に変わりはない。現物を残し、あるいは記憶に堅く残す事をして長く後世に残すべきものだ。今日から工事が始まった事も成り行きと言えば成り行きだが地元や宮古市民の関心の薄さは悲しい。そして工事着工は昔日の日々の記憶も壊しにかかったように思える。第一防潮堤の上の通路に並ぶ763基の作り物はいかにも墓の形をしているが昭和の大津波の同数の犠牲者の慰霊のための人柱を模したものだという説がある。たんなる一説だと聞き流していいのだろうか?重機でそれを壊す前に確かめる必要があったろう。確かめて最後の鎮魂をするべきであった。「第一防潮堤」と書いたが一方で「第2線堤」という言い方もある。田老地区の人自身が分からなくなって「陸側の」と言ったりしている。地元の重要施設の呼称に愛着がなくなったようで悲しいがぎりだ。統一はしなくてもはっきり分かるようにコンセンサスをとって表示するべきだ。呼応して、ブルドーザーが何もかも壊すつもりのように思える。第一防潮堤のてっぺんあたりを削って、パネルやパラペット状のコンクリート版を貼り付けるという。それによって地盤沈下した分の高さを補うというが田老人の愛着不在がここにもある。不思議な事にその設計図を田老の人は誰も知らないのだ。どんな構造なのか?どんな外形なのか?どんなつなぎ方をするのか?今のようにそこを人が歩けるのか?田老人すらだれもそんな事を知らないという不可思議。テレビでは壊すところを写して昔の堅そうな鉄筋を切断したりむしっている様子を撮影していたが、無惨も無惨だが、そんなに壊した部分に新しいコンクリートパネルをどう張り付けどう結合するのか?不思議な事に誰もそれを知らないし県土整備部も土木センターも宮古市もお上手だけ言って教えてくれないのだ。合併前の昔の田老人ならだれでも我れ先きに分かろうとしたろうに…。新聞社も新第一防潮堤の断面図を掲載してその設計やデザイン、その強さを解説してほしい。防潮堤の高さがどうの変更がどうのといっても前のものよりもろければ意味がない。というより第一防潮堤が前より弱くなる事は必至である。とんでもない事なのだ。宮古市も岩手県もこの工事を宮古市民、田老地区住民に内緒で進めようとしている。外目には建前をいいながら市民が口を挟む事ではないと内輪の官×官で進めている。「防浪堤」を村民、町民総出で賛成・反対をいいながら作り上げた関口村長の直接対話の面影は今なにもない。地元民を無視して堅牢な防災施設ができるはずはない。合意形成の努力がなく地元民が信用する手がかりは何もないからだ。住民の合意形成がなく、たった2億円の修繕工事だけで国土が保たれるはずはない。国土や土地とはそういうものだ。工事のための工事に、明治の犠牲者、昭和の犠牲者、平成の犠牲者の泣きの声を聞く思いがする。(了)
※この写真も他の写真も引用元、不明記です、お許しのこと。
世紀の拙速(せっそく)工事
たんに鎮魂や苦難の歴史、また後悔や願いだけではない、これからの地域の一体感、教育や防災や産業に向けられた合意形成の機運を、考えなく、重機による取り壊し、コンクリートによる修繕という形式的な復旧にしてしまった政治家の罪は深い。このブロックの取り壊しや、第一防潮堤、第二防潮堤、第三防潮堤の一連の工事はたんにブロック隊列の謎をないものにしただけではない、世界遺産クラスの 遺跡の本当の痕跡もなくしてしまうのである。防潮堤そのものの存在意義を何ら記録する事も、世界の津波地帯と希有な事実を何ら共有する事もなく、拙速(せっそく)に世紀の物語にふたをする様相を呈している。いわれるような津波防止効果より、この歴史的遺産の意義の喪失の方が遥かにはるかに大きいのに…
悪しき官僚主義と予算主義政治家の選挙目当てのていたらくに起因している。
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