5月25日、岩手県・宮古土木センターの防潮堤等説明会冒頭で当会から2提案を行った。ここではそのうち <第2案> について解説する。配布文書、解説共に不十分の可能性あり、ご指摘ご批判をお願いする。
静水圧設計の防潮堤では津波を防げない。防潮堤倒壊の危険性をどの程度見ているのか?
<解説>
地上鋼管の足元に30倍の負荷。これで鍬ヶ崎防潮堤は倒れないか?
(1)県庁の設計水圧図(説明会資料)
● 防潮堤にかかる津波の圧力は貯水ダムの水圧と同じという考え。「津波とは水かさが増してくるもの」という考え方で、それは間違い。盛岡の机上の設計です。津波は横方向からの力(動水圧)で襲撃してくるのです。
津波水圧(静水圧)とは単なる水深圧力。ほか、水塊重量:上から防潮堤エプロンにかかる重量。防潮堤を安定させる? 自重:これも防潮堤を安定させるファクター?後で触れるようにコンクリートブロックの自重は横からの力に対しては無力。 衝突加重:船などの漂流物衝突。静水圧では加重ゼロ、動水圧に限って破壊的加重となる。
● ── あなた方は、釜石のスーパー堤防(湾口堤防)の崩落、田老の万里の長城(防潮堤)の崩壊、の津波の現実を忘れたのですか? あなた方はそれらの被災映像や、写真、現地を見た事がないのですか? 少しでも見たのならこのような図は描かないはずです。沿岸では、ここまでの静水圧の事などは子どもでも分かっています。
(2)参考図:ユニット構造概念図
岩手県の提供する逆T字型防潮堤の図を何度見ても概念図はわいてこない。次の(3)を理解するためには中間項としてこの参考図の理解が必須である。この構造図で底版部を含めた地上部は足(鋼管)は2本であるがやまだの中の1本足の案山子と同じ構造である事が分かると思う。工学的には案山子は不安定さを象徴している。
(3)鍬ヶ崎防潮堤の現設計の心棒鋼管の足元には心棒鋼管そのものの受ける津波衝撃の30倍の力がかかります。
図は(ユニット壁)海側正面図
(左図)ユニット壁全体にかかる津波の水圧は、結局、2本の鋼管に集約され、鋼管自体に直接かかる負荷(1)の3.75倍(6÷{0.8×2}=3.75倍)の負荷がまわりからかかってくる
(右図)上半身鋼管の8 倍の負荷が1mの足元(濃い色)にかかってくる。
会わせて足元には30倍の負荷がかかります(3.75×8)。
註1)この図の足元とは鋼管の底盤に刺さった部分であり、地下鋼管杭ではない事に注意。
● 単位スパン 6mの壁に 1平方メートル当たり 1トンの力が加わると、高さ 8mとして壁全体には(6×8) 48トンの横圧力が加わり、全部の力が 2本の鋼管に集約され、鋼管の足もと1メートルには鋼管自体に直接かかる圧力48トンの30倍の負荷がかかります。2本の鋼管の地上部にはきっちりと48トンの力が加わり、その鋼管の地下 1m に刺さった2本の足元にはその30倍で1440トンの力がかかります(48トン×30倍)。津波で防潮堤倒壊は必至です。
註2)積み上げられたコンクリートブロックは津波の横からの衝撃には力学的になんの支えにもなっていません。ただそこに置いてあるだけです。ここでの計算にも入れません。ただし有事の際にはその重量は鋼管耐性の大きな負担になります。
註3)以上の説明ではコンクリートブロック部分の重さのほかいろいろな加重を無視しています。とくに心棒になっている鋼管の重量、材質も無視しています。円筒形心鋼管の四形化表現なども…
● さて、後段の津波圧力の場合(1平方メートルあたり1トン)、ではどういう事かと言うと、鋼管2本の足元1メートルには1440トンの力が加わるという事です。1本には720トンの衝撃的力です。したがって鋼管はその津波の衝撃に耐えうるつくりでなければなりません。鋼管の厚さ、材質は足りているのでしょうか? とりあえず地上に横に置いた鋼管の足元に720トンのおもりを載せてみてびくともしなければ合格です。折れ目が入ったり拉(ひしゃ)げたりしたらアウトです。合格の次には底版のコンクリート版に同じように720トンの重さをかけてみましょう。びくともしなかったら合格です。砕けたりひび割れしたらアウトです。
註5)同じ文脈で鋼管の高さが9メートルの場合、ユニットの受ける圧力は54トン、1メートルの足元には1620トンの力、鋼管1本には810トンの衝撃力が加わる事になる。アタマがしびれるからと言ってこの問題は回避できません。
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