子供のころ、裏の里山に登っては、夏休みに虫を獲りまくったものである。とくにカブトムシ、クワガタ、カミキリムシなど。今でも、図鑑を見るとワクワクする。そして、当時、採集のベースとしていたクヌギの木々を、8年前に死んだおじが、シイタケ栽培用に片っ端から切ってしまったことは前に書いた。
昆虫採集のベースというのは決まっている。夏の早朝、山に出かけると、クヌギの幹がぱっくりと割れている箇所があり、樹液が流れ出ているのだが、発酵したような、お酒のような、独特の匂いがしている。その匂いにつられて、虫が飛来して来て狂ったように樹液を吸っているのだ。
来ている虫は、カナブンやスズメバチが常連で、おけらのときはこいつらだけなのだが、たまに、大物がいる。カブトムシ、クワガタ、珍しい種類のカミキリムシなど。今日は大物がいるかどうかと思うと、目指す樹に近づくにつれ胸が高鳴る。網など不要である。樹液を吸うことに夢中なので逃げない。手でつかみ取りできる。
そういう少年時代の思い出。もう二度と戻ってくることはないとさえ思い込んでいたのだが。なんと。過去の憂いを払しょくするような出来事があった。県立紀伊風土記の丘公園で、昆虫採集のベースとなる木を数本見つけてしまったのだ。よし、明日から行くぞ、48歳の昆虫採集と意気込んだが、都合で翌日東京に戻らざるを得なかった。まさに後ろ髪を引かれる思いである。また、来年。