どんこの空(そら)に 。

きっと何かが足りない~それを探す日記~

田園2。

2007-03-03 | Sandstorm
笠松の空は果てしなく広い。
青くて、そして高い。
昼どき、正午近くのコース上には、初春の光が満ち溢れている。
少し冷たい風。
そこで馬を追うジョッキーが、なぜか滑稽にも見える。
のどかな風景に、あまりにも似つかない必死の形相。
遠くの方から蹄の音がだんだん近づいてくる。
4コーナー。
すぐ目の前を馬が走るんだ。
その息遣いも聞こえてくるほどに。
勝負どころだ。
ジョッキーも目いっぱいの力で馬を追い、ムチが飛ぶ。
その馬の一団は、一瞬にして過ぎ去ってゆく。
まるで砂嵐のように。
砂埃が舞い、風が引き裂かれ、”生”が疾走する。
鋭く大外を駆け抜ける馬。
苦しそうに頭を上げ後退する馬。
インでマイペースを決め込む馬。
ジョッキーの激しい攻防とは裏腹に、馬は正直な表情を見せる。
刹那の美しさが、そこにはある。
生きていればこそ、そこには喜びも苦しみもあるのだろう。
そこにあればこそ、そこには成功も失敗もあるのだろう。
退屈な時間は最悪だ。
金持ちになることよりも、退屈しない今日がいい。
人と比べて進むより、自分を笑って踊っていよう。
行き着く先は、みんな同じさ。
彼岸も近い。
笑う。
そして、笑う。

ゴール前。
それは、もう遥か彼方。
笠松の直線が短いなんて誰が言ったのだろう。
馬群は、どんどん小さくなってゆく。
ゴール前。
それはもう、遥か彼方。
歓声だけが大きくなって耳に届く。
時間と空間のギャップは、何か不思議な感覚だ。
どの馬が勝ったかなんて、ここからではわかりもしない。
ゴール前。
それは、まだ・・・遥か彼方・・・。

どうやら勝負がついたようだ。
4コーナー前のスタンドから立ち上がる。
ここはなぜか馬券とは切り離された場所に思える。
この辺りにはモニターは無い。
笠松には、流行りのでっかいスクリーンも無い。
だから、結果はよほどワンサイドでない限り、わからない。
そんな場所。
ただわかるのは、スタートの瞬間と勝負どころの攻防だけ。
それには、ここが一番だ。
馬の息遣い、ジョッキーの心。
それが一番よくわかる。
わかる、気がする。
笠松を訪れたとき、なぜか一日一回はここに来る。
一番、競馬が私の近くに感じられる場所だから。
ここには、競馬の魅力がいっぱい詰まっているような気がするから。
ここで新たな感覚を取り戻して、そしてまた下界に戻る。
相場師の中へ。
金儲けの中へ。
日常の世界へ。
そしてまた・・・・・
馬券に疲れたら、私はまたここに来るのだろう。

笠松の空は果てしなく広い。
青くて、そして高い。
昼どき、正午近くのコース上には、初春の光が満ち溢れている。
少し冷たい風。
そこで馬を追うジョッキーが、なぜか滑稽にも見える。

まるで、毎日の私みたいだ・・・・・。



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