つらねのため息

写真や少し長い文章を掲載していく予定。

『さよならバードランド 』

2008-08-11 00:21:45 | Musik

読み終わりたくなかったので、少しずつ読み進めていた、ビル・クロウ著(村上春樹訳)『さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想(新潮文庫)』新潮社(1999)をついに読み終わってしまった。

モダン・ジャズの絶頂期にジェリー・マリガン・カルテットなどでベーシストとして活躍した著者の「自伝的交遊録」である。超有名ミュージシャンの回顧録ではないので、あんまり派手な話は出てこないけれども、ジャズという音楽の純粋な楽しさが伝わってくる温かい作品だ。と同時にジャズが「街でいちばんかっこいい音楽だった(村上春樹・和田誠『ポートレイト・イン・ジャズ』新潮文庫 168ページ)」ころの雰囲気もまた味わうことができる。

「バップの洗礼」を受けつつも「スウィング・ジャズ・スタイルの演奏をする先輩ミュージシャンたち(いわゆる中間派ジャズメン)に対して終生深い敬意をの念を抱き続けている(「訳者あとがき」 551ページ)」著者の姿勢も(恐らくは訳者の好みとも相俟って)読んでいて心地よい。

読んでいてなんとなくジャズを聴きたくなる、そんな一冊である。
巻末の、訳者による「私的レコード・ガイド」も必見!

四月になれば彼女は

2007-12-17 22:28:44 | Musik
将棋界の女流独立問題に関して、嵐の中で凛と咲く花の様な独立派女流棋士の美しさを描いた素敵な記事の中でSimon & GarfunkelのApril Come She Willをはじめて知った。

「松本博文ブログ」「April Come She Will」

1966年発表の彼等の2作目、Sounds of Silenceに収められていたこの曲は4月に現れて8月には消えていってしまうはかない恋を描いた小品だ。いかにもポールらしい美しい詩、そして、アートのボーカリストとしての才能を再確認させてくれる澄み切った歌声、すべてがすばらしい。

Sounds of Silenceというアルバムは、1stに納められていた表題作が、本人たちの知らないところで(ディランのLike A Rolling Stoneをアレンジしたのと同じメンツによって)フォークロック調のアレンジを施され、意図せぬ(物質社会の虚無性を告発した歌が時流におもねったヒット狙いのものに仕上げられたのだから、ポールのショックはいかばかりか)ヒットとなったのを受けて急遽製作されたものである。そしてこのアルバムのヒットをきっかけに、彼等はその黄金時代を築き上げていく。

しかし、この曲が何よりもそれを象徴していると思うが、彼等の音楽はむしろあの激動の時代の中で「人々の心を代弁し、癒す時代の良心の声(湯川れい子さんのライナーノーツより)」として受け入れられていったように思う。

なんとも清々しい気持ちにさせてくれる素敵な曲である。

</object>