つらねのため息

写真や少し長い文章を掲載していく予定。

将棋文化振興議員連盟

2011-08-26 00:00:00 | 将棋
将棋文化振興議員連盟なる超党派議連が発足したらしい。会長に渡部恒三衆議院議員、会長代行に山東昭子参議院議員、鳩山由紀夫前総理、安倍晋三元総理などそうそうたるメンツが将棋に関心を持って議連をつくったという点に、一将棋ファンとして素直に喜びたい。また、日本将棋連盟首脳が、物心両面で相当に努力されたことは想像に難くない。この点も率直に敬意を表したい。

しかし、気になる点がある。ひとつはこの議連の意図がはっきりしないところだ。大物がずらりと並ぶ発起人の様子を見ると、何か法律をつくるなど具体的な動きを目指した議連のようには見えない(こんな大物の人たちがわざわざ汗をかくとは思えない)。だとすればむしろ象徴的な意義を見出しているのだろうか?しかし、産経の記事では「『事業仕分け』で、文化や芸術団体を支援するための国の補助金が削減されたことへの反発」が議連結成の背景として指摘されている。とすれば、何か政治的な活動を目指しているのだろうか。だとすれば事務局長的な役割を果たす(実際に活動の中心を担う)議員がだれなのかが気になるところである。

議連発足にあたって、それなりの出費もあっただろうし単なるタニマチ気取りで終わることのないようにしてほしいものだ。

もうひとつ、より重要なことは本当にこの議連が「超党派」なのかという点だ。詳しい名前があまり出てこないのでよくわからないのだが、写真を見る限り、民主、自民両党の以外の議員がどれくらいいるのかが不明なのだ。発起人には「たちあがれ日本」の平沼赳夫衆議院議員、共産党の市田忠義書記局長が名を連ねており、一見バランスがとれているようだが、その他の政党からの参加者がよく見えない。赤旗の記事にあるように、赤旗は棋戦を主催している。米長会長はあいさつで、「日本将棋連盟としていちばんお礼を申し上げなければならない政党は日本共産党です」と述べたとのことだし、市田議員の発起人への参加はそのためではないかと勘繰りたくなってしまうのだ。

とすれば、それ以外の政党からの参加はどうなのだろうか。

政局的な動きとは無縁のこういう議連であれば、やはり各党から参加してもらって政治的中立性をアピールするのがいいと思うし、実際に何か活動をやろうとするのであれば、全ての政党に足場があるということはとても重要になってくる。

それに公益社団法人日本将棋連盟が発足に大きくかかわっている点からもこの政治的中立性は強く求められるはずだ。その点、きちんと気配りをしているのかが気になった。

蛇足ながら付記すれば、連盟のサイトの写真で唯一のソロショットが小渕優子衆議院議員というのもちょっと気になる。勝手な想像だが、絵的にいいからというような理由で(恐らくは女流棋士の写真をちょっと使うような、それ自身前時代的な感覚で)使ったのではないかと推測するが、上記のような政治的配慮をもう少ししてもいいのではないかなという気がする。

日本将棋連盟のガバナンス

2011-08-22 00:00:00 | 将棋
日本将棋連盟会長、米長邦雄氏のウェブサイトによると、名人戦の契約をめぐって、将棋連盟は何かをしようとしているようだ。前回の契約の際に、散々もめたことは記憶に新しい。今回はスポンサーの新聞社も、ファンも素直に熱戦を期待できるような結果となることを期待したい。

そのためにも、色々と気になるところはあるのだが、一番気になるのは日本将棋連盟のガバナンスだ。米長会長のサイト内「まじめな私」というページ内の「フル回転(2011.8.13記)」という記事に、「私の決意は固まっていて、棋士個々に伝えております」という件がある。

言うまでもなく日本将棋連盟は公益社団法人という法人だ。社団法人の最高意思決定機関は社員総会(棋士総会)であり、通常の運営は理事会の決議にもとづいて行われるはずだ。上記の件を素直に読めば、そういった手続きをすっ飛ばして、会長の「決意」を「棋士個々」に伝えるのみで名人戦の契約という最も重要な問題の一つを進めようとしているような印象を受けざるを得ない。

ただ、同サイト内の「将棋の話」というページの「名人戦契約(2011.8.21記)」という記事には「名人戦契約の年。「全てを私たちに任せてもらえますか」これが理事会の置かれた立場です」という件があるので、理事会レベルでの意思決定はしているのかもしれない。

いずれにせよ、「棋士個々人と会話」ではなくきちんとした組織的な意思決定にもとづいて、組織運営が行われることを望む。

※9月4日追記
米長会長のウェブ日記「さわやか日記」の 8月26日付の記事、「契約」によると同日に「緊急月例報告会」が行われたとある。そこで「東西とも『理事会に一任』で拍手」をしたとのこと。この会合が何の会合かはこの記事からは定かではないが、「将棋連盟モバイル」の同日の中継では「棋士会」の緊急月例報告会が行われて、対局が中断した旨のコメントがあった。

例え両者の構成員が重なるといっても、「棋士会」の「緊急月例報告会」で日本将棋連盟の理事会への一任が決議されるのはおかしい。それでは「理事会に一任」という決議の正当性が全くない。やはり、公益社団法人日本将棋連盟の社員総会たる棋士総会を開いて、「理事会一任」をとりつけるべきだと思う。

『地図から消えた島々』

2011-08-09 00:11:00 | 日本のこと
もう結構経ってしまったが、6月に吉川弘文館から発売された
長谷川亮一著『地図から消えた島々』
という本が大変面白かった。



「中ノ鳥島」という島を知っているだろうか。この島は1908年に日本領であることが宣言されたにもかかわらず、1946年に島が実在しないとして、海図から抹消されてしまったという島である。この本は、このような存在が疑われ地図から消されてしまった、日本近海のいわば「幻の日本領」とでも言うべき「疑存島」について取り上げた一冊である。

もちろん最終的に存在が疑われたといっても、一度は海図等に記載されたものである以上、誰かが「発見(を少なくとも主張)」したわけで、そういった意味で言えば、海洋探検家たちのロマンがつまった一冊であるといえるかもしれない。

しかし、本書に通低して流れているのはそのような「探検のロマンと帝国主義的な欲望との差は紙一重(あとがきより)」であるという著者の認識である。本書は明治維新以後、一獲千金を夢見て南方に進出していった日本人たちの歴史であるわけだが、例えばそれが乱獲によるアホウドリの激減を招いたり、また、本書のテーマでもある「疑存島」を多く生み出すようなかなりアヤシイ詐欺話まがいのものを生みだして行ったことを本書は教えてくれる。一見「ロマン」にあふれているように思える、明治期の日本人達の南洋進出をテーマにしながらも、それと当時の帝国主義的な拡大が分かちがたく結びついていることを本書は示している。

また、本書では少し触れるだけにとどまっているがリアンクール列岩(独島/竹島)や尖閣諸島/釣魚台列嶼の問題についても、本書を読んだ後だと、また違った思いを抱かざるをえない。すなわち、それらの島々の日本への「編入」がいかに正しく行われたものであったとしても、本書に出てくるような島々との比較でみると、その実際の手続きはかなり怪しく、多分に帝国主義的な拡大の動機の下に行われたということは否定しがたいように思える。

なお、本書は筆者が運営しているウェブサイト「望夢楼(ぼうむろう)」の中の「幻想諸島航海記」というコーナーを書籍化したものである。本書はクロノロジカルな記述となっているが、ウェブサイトでは各島ごとにエピソードが整理されている。あわせて読むことで理解が進むと思われる。

海を渡る列車

2011-08-02 11:05:00 | 日記
最近たびたびチェックしていた月刊『Rail Magazine』編集長、名取紀之さんのブログ「編集長敬白」。そこに「北ドイツのナローを巡る。(1)」という記事が載ったのが去年の10月だった。「洋上に浮かぶ小島Nordstrandischmoorへと北海を渡る600㎜の軌道」という説明とともに掲載された写真はとても印象的であった。

その「編集長敬白」の最新記事によると、この「島軌道」がテレビ番組になるという。

その番組はBSジャパンで毎週木曜夜10時半から放送されている「ドイツ鉄道の旅」。8月4日放映予定の「#5 海を渡る列車 ~世界遺産・北の小島から~」でこの「島軌道」が取り上げられるという。これは楽しみだ。