つらねのため息

写真や少し長い文章を掲載していく予定。

どいちゅらんと(2005年総選挙)

2005-09-19 13:02:45 | 海外のこと
ドイツの選挙結果についてわかっていることを書くと、まず言えることは(シュピーゲルの表現を借りれば)「結果のない選挙」ということ。野党のCDU/CSUとFDPの「黒-黄色」連立でも現在のSPDと緑の党の「赤-緑」連立でも過半数には達しない。これは左派政党「左翼党-PDS」が8.7%も得票したからである。

ちなみに各党の得票率と獲得議席数は、

CDU/CSU:35.2(-3.3)%(225)
SPD :34.3(-4.2)%(222)
FDP :9.8 (+2.4)% (61)
左翼党 :8.7 (+4.7)% (54)
緑の党 :8.1 (-0.5)% (51)

総議席数は613、過半数は307
という結果になった。
(以上ZDFのHPによる)

というわけで考えられる連立の組み合わせは
CDU/CSUとSPDの大連立、
SPD、緑の党とFDPのいわゆる「信号機連立」、
SPDと緑の党、左翼党の連立
ということになるだろう。
それと可能性としてはCDU/CSU、FDPと緑の党の連立もないわけではない。

二大政党はともに得票を減らした。
議席を伸ばしたのは左翼党とFDP。
FDPはネオリベ路線だといわれているらしいので、「改革」イメージがあったのかもしれない。
逆に左翼党は新自由主義的な改革への反対を唱えることで、かなり躍進した。これまでは旧東独でしか得票できなかったが、元SPD党首のラフォンテーヌ氏の新党と統一したことで、今回は西側でもそれなりに得票しているようである。

年齢的な分布で行くとSPDはあらゆる世代で満遍なく得票しているが、CDU/CSUは年齢が上がるに従って支持が増加していく傾向がある。

逆に緑の党やFDPは若者の間で人気がある。とりわけFDPが今回伸びたのは若者の支持が大きいようだ。

左翼党は30~60位の中年層で大きく票を伸ばしている。
左翼党は職業別の分布でもとりわけ労働者の間で支持を集めているということがわかる。

まだ言い切れるだけのものはないが「勝ち組」の票がFDPへ「負け組」の票が左翼党へ流れたといえるかもしれない。

ちなみに超過議席はSPDが9、CDU/CSUが6である。

とりあえずは今後の連立交渉を見守るしかないようである。

ノルウェー

2005-09-17 23:46:11 | 海外のこと
極東の島国では政権交代に失敗した政党が次期代表をめぐってもめているが、ユーラシア大陸の反対側では政権交代が起こった。

総選挙の結果、ノルウェー労働党(社会民主主義政党)と左派社会党(急進的な社会主義政党)、中央党(農民党)の三党による赤-緑連立政権が誕生する方向になった。

個人的な研究関心からいえば極右、進歩党が大幅に進出し第二党に躍進したのは興味深い。

この国との比較で言えば、経済が好調なものの、ネオリベ路線を進める現政権よりも、福祉の充実を訴えた野党に支持が集まったというのは面白い。まあ油田のおかげでできた大量の黒字をどうやって国民に還元するかでもめてるような羨ましい国だから、彼我の比較は意味を成さないかもしれないけれども。

このノルウェーの新政権、さっそくイラクから撤退するらしい。こうやってどんどん他国が撤兵していっても自衛隊は日米同盟がある限りイラクに駐留を続けるのだろうか。

どうでもいいけど、今年は日本-ノルウェー修好100周年である。といっても、単にノルウェーがスウェーデンから独立したのが1905年ってだけなので、他にも「ノルウェーと修好100周年!」って国は結構あるだろうが。

ぶっ壊すんじゃなかったのか?

2005-09-12 22:56:49 | 日本のこと
選挙は自民の「圧勝」であった。もっとも得票率でいえばそこまでの圧勝ではないのだろうけど、小選挙区制のなせる業であろう。

しかし、これで自民党をぶっ壊すという小泉首相の公約(?)は当分果たせないだろう。ぶっ壊すと自認する人が党首になっていて、しかもその党が選挙で大勝するんだからすごい。この国の民主主義はどこへ行くんだろうか?

個人的には想定の範囲内であった。というのも、数日前に見た夢のなかで自公:307、民主:122という結果を見てたので(なぜか数字だけはっきりと覚えている。変な夢であった)。

もうひとつ、個人的にうれしかったのは初めて国政選挙で有効票を投じれたこと。ぼくの「清き一票」は毎回比例ですら死んでいたので、少しうれしい。

前回も書いたが自民と民主の対立軸はかなり錯綜しているけれども、「郵政民営化」なんていう露骨な新自由主義改革がテーマになるとさすがに都会と田舎のコントラストが出てくる。もっとも地方で勝ったのは「郵政民営化反対」というだけで色々な立場の人がいるわけだが。

しかし、そういったクリーヴィッジを前面にだして対立軸を模索するというのも一つの方策ではないだろうか。

あと小選挙区の結果を見ると民主が自民に勝ち越しているのは、北海道、岩手、新潟の三つだけ。北海道はもともと民主王国と呼ばれているし、岩手は小沢王国である。しかし新潟で民主が勝ち越したのはそういう理由ではない。社民、連合との野党共闘が奏功した結果である。共産へ流れる票も含め野党票を以下にまとめるかというのを民主党はしっかり考えるべきなのではないだろうか。

大きな政府はいけないのか?

2005-09-10 20:58:49 | 日本のこと
いよいよ明日が投票日であるが、選挙戦の議論を聞いていて一番引っかかるのがこの論点である。

ワンフレーズポリティクスの悪いところが出たというか、どうも様々な言葉が一人歩きしている感がある。
まずそもそも日本は本当に大きな政府なのかという問題がある。確かにこの国の政府は公共事業に莫大な投資をしているけど、一般に大きな政府といった場合考えられるのは一昔前ならば主要産業の国営化、それと年金や福祉などの社会保障分野での支出であろう。そういったところで国が支出している額というのは比較すればそんなに多くないはず。日本は既に小さな政府なのであり改革という言葉がイコール小さな政府を目指すというのであればじつはそんなに改革をするところはないのではないだろうか。もしどうしても改革をするというのであれば公共事業費を削る意外に大きな部分はないはずなのである。

それに大きな政府から小さな政府へと変えることがすなわち改革ではない。確かに国営事業を民営化し歳出を削減し小さな政府を目指すというのは、一つの立場である。しかしそれはひとつの立場(新自由主義)であってそれがすべての国民の利益になるかのようにいうことは誤りであろう。
民営化するということは利益の上がらないところは切り捨てるということであり、それは市場原理の下では当然である(民営化するけど郵便局をなくさないというのはこの意味でおかしい。それは郵便局をなくさないというのが嘘であるか、実際には完全に民営化しないかのどちらかだ)。ハリケーンの被害までいわなくても、自国最大の自動車企業を二束三文で外国企業に売り飛ばした国がその実態をよく表現している。

当然のことながら大きな政府のままでもよいというのも一つの立場であってなんら臆することなくそういってかまわないはずである。それは様々な多様性の中の一つの立場なのであって「改革に賛成か反対か」などという二者択一で切って捨てることはできない。

さらにおかしいのが増税とのつながりである。本来小さな政府を目指す勢力が増税をするかも知れないというなどおかしな話である(理の当然として増税をすれば支出が増えるのだから)。もちろんその裏にはありえないほどの膨大な借金が存在するからこそ、こういうひっくり返った議論になるわけだが。

本来のあるべき対立軸にそえば(改革イコール小さな政府を目指すという前提に立つと)、改革反対‐大きな政府志向‐増税賛成という勢力と改革賛成‐小さな政府志向‐増税反対という主張にならなければいけないはず。

どうも、なかなか研究者が考えてるようには実際の政治は動いてくれないが…。

たかが、されどテレビ

2005-09-09 22:58:45 | 海外のこと
ドイツの選挙が面白い。日本でも報道されていたが先日行なわれたテレビ討論が影響を及ぼしているようだ。

もともとシュレーダーさんは討論などがうまいらしくテレビ討論で勝つことは確実視されていたのだが、そのわりには野党党首メルケルさんが善戦したという評判であった。

しかしそれでも影響があったらしく、ZDFの表現を借りれば「黒(CDU/CSU)と黄色(自由民主党)が過半数を失った」らしい。つまり今選挙をやれば野党も過半数を取れない可能性が出てきたのだ。しかし社会民主党と緑の党を足しても過半数には届かない。第五党、左派党が5%の閾値を越えて連邦議会に進出することはほぼ確実だからである。

その結果、選挙結果いかんで様々な連立の可能性がありそうである。すでに可能性が取りざたされている大連立のほかにも黒(CDU/CSU)と緑(緑の党)とか赤(社会民主党)と緑と濃い赤(左派党)などなど合従連衡があるかもしれない。

それにしてもテレビ討論だけでこれだけの影響があるとは。日本で実現していたらどうなっていたのだろうか?