つらねのため息

写真や少し長い文章を掲載していく予定。

「真のフォンランド人」とは何か?

2011-04-20 16:14:00 | 海外のこと
こう書くとフィンランド人の定義についてのナショナルな論争のようだが(苦笑)、ここで取り上げたいのは「真のフィンランド人」という政党のことである。

17日のフィンランド総選挙で反EUのこの政党が躍進し、一挙に議会第三党になったのだ(例えばアサヒの記事はこちら)。このことについてY武さんがブログでふれられていたのでコメント欄にちょくちょく書いていたのだが、コメント欄を荒すのも何なので自分のブログにその辺の書き込みをまとめてみようと思った次第である。

なお、この党については公式ウェブサイトがあるのだが残念ながら全てフィンランド語でさっぱりわからない。というわけでひとまずウィキペディアの記事はこちら、より詳しい英語版の記事はこちら

この辺を見てわかるのは、反EU、反移民で自分たち(この場合フィンランド人)のつくってきた近代福祉国家を守ろうとする、まあ欧州ではよくある(ってのも変だが)極右政党だということ。例えばデンマーク国民党などが近い存在で、経済的には左翼だけど、社会的価値観でいうと右翼という政党で「福祉ショービニズム」とか言う。むしろ他の極右政党よりも「福祉国家を守る」的な主張が強く(この辺は北欧的特徴)、キワモノ度は低い印象を受ける。

ただ、1995年結党で結構歴史があるので「なぜ今?」という疑問は残る。選挙結果(これもとりあえず英語版ウィキペディアの記事を参照)を見てみると各党数パーセントずつ得票を減らしているのだが、特に首相を出していた中央党の落ち込みが激しいので、現政権批判の票が集まったような印象を受ける。本来、野党が集めるべき政権批判票も、ちょっと過激な党がポルトガル救済問題で目立ったのでそちらに流れたのかも知れない。

あと、全くの想像だが、左の側で同じような主張の受け皿になりそうな共産党(正確には人民民主同盟ですが)が、フィンランドの場合冷戦時代に政権参画したりしてたので、「体制派」的なイメージがついちゃってるのかも知れない。

ところで、この党を(恐らくはその経済政策から)「中道左派」と見る分析もあるようである。北欧諸国は社民党、共産党などの社会主義ブロックと保守政党や自由主義政党などのブルジョワブロックというような色分けがされるが、フィンランドではこの区別をあまり聞かない。その辺が社会主義的な思想を出自としていないこの党が「左派」に含まれる素地となっているのかもしれない。

いずれにせよ、EUの拡大と統合の深化につれて、こういった反EUを掲げる極右政党が進出する国が多くなっている。フィンランドも例外ではないということだ。

反原発と統一地方選

2011-04-11 22:19:00 | 自治のこと
某ミュージシャンの反原発ソングが話題になっている。この時期にこういった歌を発信するのは大切なことだし、勇気のいることだと思う。素直にすごいことだと思う。

でも内容には異論がある。すくなくとも「ずっとウソだった」わけではないと思う。確かに政府や東京電力は「原発は安全です」と言い続けてきたわけだけれども、「原発は危険だ」という人は少なからずいたわけで、例えば浜岡原発なんて非常に危険だとずっと指摘され続けてきたはずだ。今になって「ずっとウソだった」ということはそういった声に耳を傾けてこなかったこと、政府や東電の言うことに盲従してきたことの裏返しにすぎない。

そう考えると、「何人が被曝すれば気がついてくれるの?この国の政府」という件は象徴的だ。結局のところこの歌の作者は「政府が気がついてくれる」のを待つことしかしないわけだ。換言すれば「私たち」が気付いて「政府」を変えるという可能性をはじめから閉ざしてしまっているのだ。

これだけの事故が起きながら、原発推進派の知事たちが当選した背景にはこういうメンタリティがあるような気がしてならない。結局のところ、この国の有権者は原発が怖いものだということが分かっても、偉い人がそれに気づいてくれるはずだと信じて、それを待つことしかしていないのではないか?それではこの国はいつまでたっても変わらないと思う…。