日本将棋連盟のホームページに
「女流王将戦再開までの経緯」なる文書が掲載された。
青野照市渉外担当理事の名で出されているせいか、これまでの連盟のこの種の文書と比較すると格段に読みやすい文章だ。もっとも、それが、この文書が実際に青野九段の筆によるものであるためなのか、あるいは単に青野九段の署名があるだけでこれまでの文書より真摯なものだと想像してしまうところによるのかはわからないが(苦笑)。
ところで、恥ずかしながら女流王将戦がどのような形で再開されたのかを詳しく知らなかったのだが、この文書が出されたのにはわけがあるようだ。
先の連盟の文書にあるように、女流王将戦は30期をもっていったん中断ということになった。そして再開にあたり、日本将棋連盟女流棋士は全員参加、LPSA(日本女子プロ将棋協会)女流棋士は人数を制限された招待枠での参加ということになった。
これを不満とした人々により、「もし本当なら霧島を飲むのをやめないか?」(霧島酒造は同棋戦のスポンサー)というような書き込みがあったようだ。
このことを危惧された方が霧島酒造に事実関係を確認するようなメールを送られたとのこと。
すると日本将棋連盟は「『脅し行為』メールが霧島酒造に送られた」と理解されるような内容の会報を棋士に送ったという。
そこで先にメールを送られた方が「脅し」のような行為ではないことを確認するようなメールを連盟にお送りになり、詳しい説明を求めた結果、事実関係を説明するような先の文書が出されるにいたったということのようだ。
実はこのメールを送られた方が、普及指導員番号の原伸一さんという方で、詳しい経緯は同氏のブログにアップされている。
女流王将戦について
女流王将戦について(2)
女流王将戦について(3)
女流王将戦について(4)
多くの将棋ファンはもううんざりという感じだろうが、この種のトラブルに慣れっこになってしまうというのも異常なことだ。まずはそのことを確認しておきたい(苦笑)。
そのうえで連盟に最低限求められること、それは「しっかりとした説明」だ。
上記の各エントリーで繰り返し原さんが述べているように、「問題点は、LPSAと合意しているかどうかということではなく、そのことをタイミングよく納得ゆくように一般の将棋ファンへ伝えるという配慮の欠如」にある。
スポンサーなど組織や団体相手ではなく、まずはファンにしっかりと説明をすること、そのことを連盟は改めて認識しなければならない。そもそもなぜスポンサーがお金を出してくれるのかと言えば、将棋ファンがいるからなのだから。
また、同じく原さんが指摘しているように「日本将棋連盟により本件の問題提起がされたのが、LPSAの中井代表が大和証券杯決勝の大事な一番を目前に控えた時期であったこと」という点も大事であろう。今回は穏便にすんだものの、事態が深刻になればファンが将棋を楽しむという機会自体が失われかねなかった。そのことの重大性を連盟は理解するべきだ。
その原さんが上記「女流王将戦について(4)」で述べられているように「対応が迅速であったこと、理解しやすい説明であること」といった点は非常に評価できる。
これまでの連盟の対応に比して、長足の進歩がみられるといっても過言ではない。
ただ、迅速な対応や理解しやすい説明というのは、ある意味普通のことだ。また、この種のことはファン(そもそも普及指導員の方ではなく単なる「一ファン」からの問い合わせにここまで対応したのかも疑問だが)からの問い合わせに「対応」するのではなく、自ら説明してしかるべきことだろう。
その意味でいえば、日本将棋連盟の運営はまだ一人前とはいえない。今回のような、多くのファンに納得のできる運営が普通に行われるような組織になることを期待したい。