先日、札幌出張の際に古書店に立ち寄って購入した山内栄治『流氷のかんざし』(1995年、北海道新聞社)を読了。同じ著者の『雨花台の石』と迷って、装丁が気に入ってこちらを購入した。一言で言えば、良質なエッセイ集。1990年前後という(社会に豊かさと希望がある)時代背景もあるのだろうが、札幌、北海道という土地に根差しながら、社会の動きに目を配りつつも、様々な人との出会いや身近な出来事を良心的に描写した作品集である。
著者の山内栄治は1915年生まれ。労働運動など社会運動に携わるなかで、文芸活動にも深くかかわり、北海道労働文化協会の会長などを務めた。
生協運動にもかかわり市民生協(現在のコープさっぽろ)顧問として、北海道生協連の『北海道生協運動史』の編纂にも携わっている(明示はされていないが戦前編の執筆を担当したと思われる)。栗山町で戦前の消費組合運動に関わっており、『民衆の光と影-私の昭和史』(1987年、三一書房)はその栗山消費組合の貴重な記録でもある(もちろん、それだけでなく特高警察の監視の中で、社会運動や文芸活動に一人の青年が取り組んだ記録としてとても興味深い一冊である)。同書117頁には栗山消費組合のCO-OPマークが掲載されているが、関東消費組合連盟のそれとほぼ同じであり、関東消費組合連盟-日本消費組合連盟という中央の消費組合運動の流れが北海道にもおよんでいたことを確認することができる。
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